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第213号

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週刊アスキーで紹介されました。

読売新聞福島版で紹介されました。

 大晦日のNHK紅白歌合戦も後半に入っていた。午後九時四十五分ごろ、ステージのまんなかに1台のグランドピアノが登場した。嵐の櫻井翔さんがそのピアノで「ふるさと」を弾き始め、ほかの四人のメンバーと出場歌手たちは大合唱した。

  夕暮れせまる空に 雲の汽車見つけた
  なつかしい匂いの町に 帰りたくなる


 ピアノには「寄贈 四家広松殿 平成11年9月吉日」と記されている。いわき市平豊間でかまぼこを作っていた広松さん(享年94)が、孫娘が通 う豊間中学校の体育館の新築記念に贈ったという。
  豊間中学校は目の前に海がある。3月11日の大震災で津波に遭い、ピアノは体育館のステージからそでに落ち、階段に引っかかっていた。砂でいっぱいの体育館を片づけに来た自衛隊が見つけ、がれきにするには忍びないと、外側をきれいに拭いて体育館のまんなかに置いた。
  5月末に地域の人々や同窓生、保護者、在校生などが集まって学校を掃除し、終わった後、ピアノを囲んで校歌を歌った。小さな音だったが、ちゃんと伴奏できた。ピアノにとって1番なじみの曲。大津波に襲われた日の午前中に行われた卒業式でも奏でた。かつてPTA会長だった広松さんも、聞き慣れていたはずだ。
  ピアノショップいわきの遠藤洋さんが体育館で、初めて砂まみれのピアノを見た時、再生は不可能に思えた。それでも行く末が気になった。ピアノにはがれきになるか、遠藤さんの所有にして傷を残しながら再生するか、二者択一の道しかなかった。
  「同じことがまた繰り返されないように」。遠藤さんはピアノを再生することを決めた。すべてのパーツをはずし、洗って塩を取り除いた。新しい部品を注文したが時間がかかるものもあるため、中古のグランドピアノを1台購入し、とりあえずの部品に使った。外側は変えていないが、なかの細かい部品は95%ぐらい交換した。
  そしてピアノは蘇り、クリスマスにTBSの報道番組、大晦日にはNHKの紅白歌合戦に出演した。
  広松さんは子どものころから苦労した人だった。「みんなに支えられた」という思いがあり、常に地域を思っていた。その思いがバトンのようにつながって、ピアノが再生され、大晦日のステージとなり、希望のピアノになった。

  山も風も海の色も
  いちばん素直になれる場所
  忘れられない物語がそこにある




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