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建築家・安藤忠雄さんが講演で話していた。安藤さんの事務所では大学を卒業して入ってきたスタッフに木や草花の世話をさせることにしている。安藤さんの評判が高まるにつれて一流大学の学生が門を叩くことが多くなった。
その日は雨が降っていた。安藤さんが何気なく外を見ていると、事務所の若手スタッフが木に水をかけている。命じられたようにいつもの時間に決めごととして。安藤さんは愕然とした。「勉強がいくらできても、これでは社会では通用しない」
若手社員の対人能力や行動力が落ちているのは、組織にしがみついた「パラサイト・ミドル」が若手成長の重しになっているから―と説くのは、ジャーナリストの三神万里子さんだ。
定年延長が一般化したことで意思決定権限が高年齢層に移り、退職まで波風を立てずに過ごそうとする人たちが増えているのだという。
保身に走れば「当たらず触らず」「長いものにはまかれろ」となり、リスクを負わなくなる。結果、現場の情報を歪め、ただ定年までしがみつくことだけを考える人が増えていく。それが「パラサイト・ミドル現象」の実態だというのだ。
今回、行政力を取材して感じたのは人間力、創造力の枯渇だった。意思決定というボールの押しつけ合いが日常的に行われ、責任転嫁がまん延している。若手に権限を任せると問題が起きたときに自分の責任になるし、自分も責任を取りたくないから、意思決定を上に委ねたり先送りしたりする。そうした現状が、組織の活力をそいでいるのではないか、と思った。
仕事のやり方を教えるのは確かに必要だが、「それをなぜするのか」が第一だろう。いま行政には、人間力、創造力、決断力、そして実行力が問われている。
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