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ピアニスト 小山実稚恵さん

 オープン前のアリオス大ホールで、2月9日、小山実稚恵さんのピアノ試奏会が開かれた。演奏はショパンとリストを3曲ずつ。試奏会後、小山さんとピアノのことなどについて、インタビューした。小山さんは飾らず自然体で、1つ1つ丁寧に、考えながら答えてくれた。

 生まれたのは仙台です。3歳から中学2年まで盛岡で育ち、それから東京です。1度、大宮に行きましたけど。だから何か感じますよ、東北は。
 ピアノは5歳の終わりごろ始めました。おもちゃのピアノが好きで、いつも遊んでいて「本物のピアノを買ってほしい」とねだり、アップライトのピアノを買ってもらいました。欲しいと思った時から、ピアノはずっとずっと好きです。
 ピアニストになろうと意識したのは大学院生、海外のコンクールを受けたころですが、盛岡で始めてすぐ、ピアノは生活の中で大きなリズムを占めるようになりました。ただ自覚はなく、先生を喜ばせたいな、という感じでやっていたんじゃないかな。先生が熱心だったので、学校が終わると先生のお宅に行っていましたね。
■ 
 ピアノはやってもやっても思うようにならず、こうしたい、ああしたいというのが限りなく続きます。それが魅力です。表現したいことすべてに対する思いは、尽きることなんてないんですよね。
 弾く場所は毎回違うし、楽器も違う。だからすべてのコンサートは初めてのことだらけ。2006年から12年間のシリーズ(Bunkamuraオーチャードホールほか全国五都市にて春秋年2回、全24回)を始めましたが、そこでは同じ会場で、同じピアノを使っています。なのに、楽器の状態、天気、その日の自分の体調…、1つとして同じ条件はありません。どうすべきかは常に手探りです。わからないまま一生を終えることになるんでしょうけど、もしかしたら一生に1度くらい「きょうは」と思える日が来るのではないかと弾き続けています。
■ 
 10年ほど前、バッハを集中的に弾きましたが、その時チェンバロの演奏もたくさん聴きました。ピアノという楽器はすごく自由です。でもチェンバロは、ピアノのように音色を変えることができません。基本的には同じ音色で同じ発音。なのに、演奏家が感じている音楽がひしひし伝わってきます。同じフレーズが、祈りに聞こえたり、希望を感じたり、絶望に打ちのめされたり。不思議でした。不自由な楽器で自由な表現を求めて一瞬一瞬を、命懸けで弾いています。
 ピアノは簡単に美しい音が出るし、強弱もつけられる。「こうしたい」という気持ちがそれほど強くなくても、何とかなってしまう。それに気づき、私はどうしてこんな中途半端だったんだろうと愕然としましたね。自分の気持ちを流して弾いてしまっていたのではないかと…。それから自分が変わったと思います。
■ 
 好きな作曲家はやっぱりバッハかな。遊び心と、時代を超えた新鮮さがあるのに、常に奥には不変の強さと確かさがある。全てを超える力があるんです。
 ピアニストとして好きなのはラフマニノフとショパン。音楽として好きなのはベートーヴェン。魂を感じるというか、人間でよかったと思えるというか。シューマンは人間ぽくて、もつれたところが魅力的です。弾く喜びはラフマニノフ、リストかな。
■ 
 表現するということはリスクと隣り合わせで、こうしたいと思った時それを欲するままに弾けばミスも増えます。でも、それをしなかったら、演奏することに何の意味があるのでしょう。ピアノという楽器を通 して、自分の気持ちを聴き手にどう伝えていくのか、これは永遠の課題です。
 やっぱり、魂を込めるということですよ。どうしたいか、を強く持つ。それしかありません。何かを表現する時には、全員がいいと思ってくれることなど、世の中に1つだってあるわけないんですよね。だから自分を信じてやるしかありません。
■ 
 ピアノをやめたいと思ったことは一度もないんです。それ以外のことは、飽きっぽくて何も続かなかった。あれも始め、これも集めたりしたけど、ピアノだけはずっと面白いと思っています。本当に好きなんです。


小山実稚恵さんのピアノ開きコンサート
 ピアノ開きコンサートは4月13日午後2時から、アリオス大ホールで開かれる。
 曲目はシューマンの「アラベクス」「ピアノ・ソナタ第1番 変ヘ長調 作品11」、リストの「愛の夢」「ラ・カンパネラ」、ショパンの「ノクターン」「英雄」など。
 チケットは一般S席3000円、A席2000円、車いす2000円、学生1000円(A席のみ)。3月1日発売開始で、申し込みはアリオスチケットセンター(22)5800。



 こやま みちえ 1982年、チャイコフスキー国際コンクール第3位、85年ショパン国際ピアノコンクール第4位と2大国際コンクールに日本人として初めて入賞。2005年、広上淳一指揮、日本フィルハーモニーと共演した20周年記念演奏会は、文化庁芸術祭音楽部門の大賞を受賞した。2006年からはBunkamuraオーチャードホールと全国五都市で春・秋の年2回ずつ17年までのプログラム「小山実稚恵の世界」を始めている。いわきでは平市民会館時代にコンサートを開き、今年4月13日にはアリオスでピアノ開きコンサートを開く。



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