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 湯本から遠野へ向かう道路沿いには7つもの野菜直売所がある。近くに住む生産者たちが協力し合って品物を揃え、対面販売を行っている。モットーは新鮮で生産者の顔が見えること。話題は野菜だけにとどまらず山菜や野草、自然全体へと及び街と山のコミュニケーションを繋いでいる。こうした直売所は遠野だけにとどまらず、三和や田人などにも多い。直売所の現状を取材した。

 湯本の温泉街からスパリゾートハワイアンズを過ぎるとめっきり緑が多くなる。すると道路沿いに野菜の直売所が現れてくる。市内には、田んぼや畑の近くに楚々とある無人のものもよく見かけるが、この路線の直売所は季節季節の露地ものを集め、農家の人たちが店番をしている本格的なものばかりだ。
 遠野町深山田の直売所「山さと農園」は旧知の佐藤吉行・登志子さん夫妻が中心になって運営していて、無農薬野菜を置いている。ただ、いまの時期は野菜の端境期に当たり、品物が思うように用意できないのだという。確かに店内を見渡すと、コゴミ、タケノコ、ハニンニク、ニラ、エンドウマメ、エシャレット、ホウレンソウなどが申し訳なさそうに並んでいた。そして小屋の中には、佐藤吉行さんと上遠野一彦・悦子さん夫妻がいた。
 「今年は不思議と虫がつかないなぁ」と上遠野さんが言った。無農薬栽培の敵は雑草と虫。だから手間がかかるし、見栄えもさほどよくない。しかし、それが無農薬の証であり誇りでもある。当然値段は高いのだが、相場に左右されずにつけているため、市価より高かったり安かったりする。
 市内にある直売所の中には「直売所」と銘打ちながら市場から仕入れて売っているところや、あちこちの農家に声をかけて品物を集める八百屋さん形式のものもある。佐藤さんたちは、この野菜をどのようにして作ったかを、作った人が責任を持って説明できる、生産者の顔が見える販売をするのが「直売所」だと思っている。
 「正直、生産者というのは、作りやすく率の良いものを作りたいと思っている。だから無農薬というふれこみも、きちんと調べて信頼できるかどうかを確かめた方がいい」と佐藤さんは言う。
 以前、タレントの所ジョージ夫妻が直売所に寄り、野菜などを買っていった。農家の人たちは朝から晩まで畑にいて、土と向き合う時間が多いだけに、直売所でまちの人たちと話すのが、良い息抜きになるのだという。
 まちの人たちは季節季節、山に緑を求めにやってきては旬の新鮮な野菜を手に取り、山菜に目を輝かせる。だから、フキノトウやタラの芽、コゴミ、ワラビやゼンマイ、キノコなど土の香りがする山の幸、さらに農家手作りの梅干しやラッキョウ漬けなどの伝統食などがよく売れる。そして直売所は情報交換の場にもなる。
 最近は野菜の販売にとどまらず、山菜飯や麦とろ飯、ソバ、柏餅など素朴な農家の味を振る舞う農家レストラン風のところも出て来た。佐藤さんも直売所の裏山にミモザとブルーベリーを植え、ミモザの森、ブルーベリーの丘の中でコンサートなどのイベントを行うことを計画している。「山の良さを知ってもらい、自然の中で心の交流ができれば遠野地区の活性化にもつながる。宣伝は控えめに、細く長くです」と佐藤さんが目を輝かせた。



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