黒潮に乗ってやって来るカツオの群れが、常磐沖に接近している。現在の漁場は銚子、八丈島沖。これから北上すると、いわきの小名浜、中之作港はカツオの水揚げで大にぎわいとなる。いわきのカツオを使って土佐風の「藁焼きたたき」を全国に発信している、オーシャン物産(中之作字須賀)代表取締役の細木茂彦さん(63)を取材した。
細木さんが常磐沖で獲れるカツオに着目したのは13年前。全国各地で獲れるカツオを比較してみると、大きさや脂の乗り具合、漁獲時期がいい。その割りには知名度が低く、値段も安い。「中之作港周辺を基地にして、揚がったばかりの新鮮なカツオを素材に土佐風のたたきを作って出荷すればどこにも負けない」と思い、行動を起こした。いわきでは刺身にして、ニンニクや生姜を薬味に醤油で食べるのが一般
的だが、土佐の場合、藁を燃やしてカツオの切り身をあぶり、玉葱のスライスやキュウリの千切りにニンニクスライスを和え、昆布やカツオのだしを使った酢ベースの独特のたれをかけて食べる。
しかし、東北ではカツオを酢醤油で食べる習慣がないため、はじめのうちは「酢が強すぎてしっくりこない」と評判が今ひとつだった。そのたれを東北・関東風にアレンジし、販路を拡大していった。
細木さんのこだわりは、小さいときから接してきた土佐の食文化と、いわきで獲れる良質なカツオとの合体。新鮮な素材をおろし、藁の火であぶったあと氷水で締める。それを口に含むと、独特の香りと風味、さらに脂の乗ったカツオの舌触りがこたえられない。「カツオの旬は初夏から夏にかけてで、その時期にすぐ近くで獲れるいわきには時と地の利がある。いわきのカツオは全国ブランドになり得る」と細木さんは言う。
経済至上主義がはびこり、輸入物、冷凍物が主流だった水産加工業界だが、ここにきて消費者が食の安全を意識し始め、どこで獲れた魚か味はどうかを求めるようになった。そうしたなか、細木さんはカツオのたたき以外にも、常磐沖で獲れるサバを使った焼きサバやイカの一夜干しなどを製品として出荷している。そういう意味で「前浜(近海)で獲れた新鮮な魚を加工する」ことにこだわる細木さんにはいま、追い風が吹いている。
オーシャン物産(55―5517)の「藁焼き・カツオのたたき」は400〜600円。市内ではマルト、フジコシ、おのざきなどで扱っている。
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