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 県道常磐勿来線を湯本から植田に向かっていく途中、ヘレナ国際カントリークラブを通 り過ぎた先に「野らぼう」(=添野町桑木町52)がある。目印は、田んぼのなか道に立つのぼり旗。そこに建つ手作りのビニールハウスで、水曜と日曜に「野らぼう市」が開かれている。

  野らぼうは小川慶子さん(39)が始めた。就職活動をしている大学時代、食に興味があることを自覚し、東京のハンバーガーショップやベーカリー、イタリアンレストランで仕事をして、3年半前、ふるさとに帰ってきた。そして自宅の井戸小屋を菓子工房に改装して、米粉のシフォンケーキやプリンを作り始めた。
  半年後の2010年10月、自宅わきの空いていたスペースで、野らぼう市を始めた。ビニールハウスは父親が3日間かけて建ててくれた。野らぼうは女性が農作業の時にかぶる野良帽のことで、姉と幼稚園児だった姪が野良帽をかぶり、野良帽をかぶった人を対象に「野良帽カフェ」を開いて遊んでいたのに由来する。
  慶子さんのお菓子作りの基本は食べておいしくて、すべて手作り。だから手間がかかる。素材も例えば、米粉は自家製の米を粉にして使い、すべて有機栽培された食材ではないが、できるだけこだわり、勤めていたイタリアンレストランで作っていたマフィンやスコーンなども作って並べた。
  初めは地区の人たちが友達を連れてきてくれて、少しずつ野らぼう市は広がっていった。

  東日本大震災が起きた3月11日、慶子さんは3日後のホワイトデーのマドレーヌの仕込みで、焦がしバターを大量 に作っていた。めまいがしたように火にかけていたバターが大きく揺れ、慌てて火を止めて外に出てうずくまっていると、瓦が落ち、大谷石の塀が倒れた。
  水道も電気も止まり、その日は家族みんなで野らぼうハウスに布団を敷いて寝た。翌日は家を片づけて、と前向きに思っていたところ、原発事故も起きた。チェルノブイリ事故後に、当時、中学生だった慶子さんが読んだ、事故を描いたマンガの内容を思い出して怖くなった。
  ニュースを見ながら、ネットで放射能の拡散のシミュレーションも調べ、家族で避難した。のはら市を再開させたのは、4月下旬だった。食べ物を扱うため、原発事故による土の汚染がショックだったが、空間線量 は思っていたほどでなかった。
  卵や牛乳などお菓子の材料は自前で放射能を測定している、生協の宅配パルシステムを利用している。震災当時、生後10カ月だった姪がいるので、放射能から子どもを守らないといけない気持ちは、子どもを持つ家庭と変わらない。
  それでも、小さな子どもがいる家庭や孫のいる家庭の人たちの足は遠のいた。いまになって思えば、もっと安全性を伝えればよかったが、あえて声高に言わなかった。しかしそのうちに、子どもを持つ人たちも野らぼうを信用して、買いに来てくれるようになり、いまではお客さんの数は震災前に戻りつつある。

  震災の年は、慶子さんの家では米作りを2割ほどに控え、残りの田んぼにはひまわりを植え、野らぼうハウスはひまわりに囲まれた。田んぼの土の汚染は心配したほどでなく、収穫した米にも放射能は移行してなかった。
  小名浜の市民放射能測定室は500円で、作物に含まれる放射能の数値をきちんと出してくれるので、便利に利用している。慶子さんの父親は10年前からなめこやシイタケの栽培を手がけていたが、きのこ類は放射能を吸収しやすく、あきらめた。
  不思議なことに、野生のきのこもタケノコも一昨年より昨年の方が放射能の値が高かった。アケビは皮に集まるようだ。ハウスイチゴには出ていなかった。そうやって、1つ1つ放射能を測定して、確認していくしかない。

  自然に囲まれた野らぼうハウスは、その時々、風景が変わり、冬にはハウスのなかに火鉢も登場する。訪れたお客さんと火鉢を囲んで座り、しばらく、お茶を飲みながら話をする。ハウスの一角には近所の人が作った野菜なども並べて販売し、応援している。もちろん、野菜などはちゃんと放射能を測定している。
  プリン、ティラミス、ゼリー、シフォンケーキ、マドレーヌ、クッキー、ジャムなど手作りお菓子が並べられたハウスは、ゆっくり、のんびり時間が流れている。時々、常磐線を走る電車の音も聞こえる。
  ゆくゆくはピザやパスタのレストラン、それも気軽に買えるように、テイクアウトのお店を持ちたいという。
  野らぼう市は水曜と日曜日の午前9時から午後3時まで。連絡先は0246(62)3467。




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