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後期高齢者なんていやだ

 病院の待合室で、顔見知りの男性2人がばったり、久しぶりに会ったようだった。  「おめえ、しばらくだったな」
 「ほんと、しばらくだったな。体はどうしたんだ」  そんな会話がしばらく続いたあとだった。
 「おれは75まで生きればいいな」と、見かけ若い方の男性が言った。
 「そしたらおめー、あと2年だっぺ。2年しか生きたくねえのか」
 「んだって75になったら、後期高齢者って言われるんだぞ。おれ、後期高齢者なんていやだ」
 「おれは80まで生きてえな。でも、それまで生きたらもっと生きたくなんだっぺな」

 最近、後期高齢者という言葉をよく耳にする。4月から後期高齢者医療制度がスタートするからかもしれない。75歳以上の高齢者を意味する言葉で、65歳から74歳までは前期高齢者と言うらしい。前期高齢者と後期高齢者。法律上のお役所言葉だが、とても違和感がある。
 いつ、だれが、なぜこのような言葉を作ったのか、気になって厚生労働省に聞いてみたが、結局はわからなかった。逆に、なぜそのようなことを尋ねるのか、担当者は不思議に思ったかもしれない。あまりに事務的な言葉で、いまの世の中を表しているように思える。
 花筏という言葉がある。水面に桜の花びらが舞い散って、筏のように流れていく様子をいう。時雨心地という言葉もある。氷面鏡という言葉もある。日本語は情景をも浮かばせる美しい言葉がたくさんあるのに、このごろ言葉がぱさついている。
 
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