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オーストラリアの先住民族のアボロジニの集落のモアンジャンに今来ている。ここ西オーストラリアのキンバリーにはバオバブの木が原生している。その中で一番有名なバオバブがプリズンツリーと呼ばれる太っちょな木である。この木は中が空洞になっており、その昔名前の通
り、牢獄として使われた悲しい歴史のある木である。この木の前でアボロジニの長に話を聞いた。
「この木を私は見たくもない、ここにいるのもつらい。しかしこの木には存在し続けてもらわなくてはならない。なぜならば、私たちのつらい歴史を忘れないように語り続けてもらわなくてはならないから。そうでなければなにもなかったことになってしまうから」
白人が先住民族を迫害した時代があった。しかし彼らは今共存している。しかしアボロジニは許してはいない。しかしアボロジニは戦いはしない。かれらはこの木にすべてを語らせようとしているのか?
アボロジニの世界観を象徴するものとして「ドリームタイムストーリー」というものがある。これは5万年の歴史を語り継ぐお話しである。その最初に登場する「ワンジナ」という精霊がいる。ワンジナは大地を創り、海を創り、木々を創り、生き物を創り、人間を創り、すべてのものを創世した。
ワンジナはこのキンバリーのアボロジニであれば子供でもみんな知っているし、その姿を絵に描くことが出来る。その特徴は「口」がないのである。モノを言わなくても伝わるパワーを持っているワンジナ…とアボロジニたちは口のないワンジナを説明してくれるのだが、迫害されながら抵抗しきれなく、心になにかを持ちながら、今現在を享受しているその姿は、口のないワンジナにもイメージは重なるところもある。
夢を語りながら今を生きるアボロジニたちは、彼らにとってドリームという響きは、決して夢という輝きをもつものだけではなく、忘れがたき悲喜をも含めた、もう一つの現実とは異なった時間ということのような気がする。
そんな夢をうつつに持続することが出来るのがアボロジニの世界観なのだろうか?
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