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水中写真の大御所、中村征夫さんと一緒に海に潜りました。場所は熊本県の牛深の海。中村さんは夏の夜の生命の一大イベントである珊瑚の産卵を撮影しに来ていたのです。私は中村さんに案内されながら牛深の海を訪ねました。
「いやー産卵は凄かった!物凄くよかった!言葉で言い表せないぐらいびっくりした!とてもキレイだった!」…。なんて陳腐な言い方なんでしょうか?もう少しその風景が浮かんでくるような言い方はないのでしょうか?そんな表現では「ほんとに見たのか?」と疑われてしまいますよ…。「すいません、私は見ていません…。産卵の日には間に合わなかったのです」
悲しい!チョー悲しい(北島康介風)。珊瑚が産卵するのは年に一度、夏の満月か新月の夜。今年の出産予定日は8月16、17、18日の3日間だったのですが、私が牛深に着いたのは17日で、珊瑚の産卵があったのは16日の午後8時ごろだったのです。
16日の夜に東京にいる私に熊本の友人から電話が入りました「これから中村さんと海に出ますが、きょうの可能性もあります」。次の日の朝一番の飛行機で熊本に向かい、「珊瑚よ!まだ産卵するな!出ないでくれー!」と祈りつつ、天草空港に着きました。そして迎えの友人に挨拶もそこそこに出た私の言葉は「出た?」の一言。すると友人は「出た」。
しばし沈黙…。「そうか、出たか…見た?」すると友人は「見た」…。再びしばし沈黙…。「キレイだった?」「物凄かった」…。三度しばし沈黙…。
珊瑚の産卵が確認されたのはまだ最近の話です。そしてその日が予想できるようになったのもここ数年のことです。夜の海で繰り広げられる産卵はピンクの小さな卵を珊瑚がさきっちょから一斉に放出するのです。案内人と装備と日程とが準備できないとそうやすやすと見られるものではありません。中村さんが珊瑚の産卵の撮影で熊本の海に潜ると聞いたのは去年の秋の話でした。「私も一緒に連れて行ってもらえませんか?」とお願いしてから一年越しであったこの産卵ショー観劇計画はタッチの差でメダルを取り逃がしてしまいました。悲しい!チョー悲しい!(北島康介風2)
「簡単には見られないものの方が、見たときのありがたみは増すというものです」と中村さんが言ったとか言わないとか。「珊瑚の産後が見られたということで」とどうでもいい駄
洒落で文章を締める自分が悲しい。
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