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南太平洋ミクロネシア連邦共和国ポンペイ島に隣接する孤島ナラップで、私は火を起こそうとしていた。天気は雨、石で囲った竈に島の中で拾ってきた小枝、芝草、にライターで火をつけて、なたで割った木をくべる。
雨が強くなってきた。火を消すまいと竈の上を木で覆う。ここらあたりの雨は突然降ってきて、突然止む。雨と火の一騎打ち、どちらがしぶといのか微妙な判定に持ち込まれそうな局面
である。火のセコンドはくじけそうな炎に息を吹きかけエールを送る。30分かけて火をおこし、30分かけてお湯を沸かす。雨にぬれた身体もその頃には乾いていた。
竈の向こうには水平線が見える。竈の周りの動くものに目が引かれるとヤドカリがいる。小屋の軒先に吊るしたバナナは黄色く色づいてきた。
バナナの皮をえさに魚が捕れるか?潮が満ちてきて2メートル先には魚が泳いでいる。ためしにバナナの皮をちぎって海に投げ込んだ。蟹・蟻・とかげ、みんな食べ物をさがしてうろうろしている。
あの時間は今ではもう海の向こうの遠い国での昔の出来事。物語の1ページのようなバーチャルな時間であったが、私の身体はあのときのことをいつでも今そこにいるかのごとく思い出すことができる。今頃あのバナナの皮は海のそこでどうなっているのだろうか?
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