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イラスト 若松 光一郎  
 原 しのぶ

 2月15日号で(章)さんは風邪対策を語っていた。生姜湯にゆず湯に玉 子酒。ちょうど日本語教室でも風邪が流行っていたので、早速生徒達に各国の風邪対策を聞いてみた。日本では到底ありえない驚きの方法があるのでは? とワクワクしながら話を聞いていたが、期待は大きくはずれ、国が違っても同じ人間。考えることは同じで、やはり暖かい飲み物や食べ物を取るのが主だった。蜂蜜レモンやハーブティー、スープなどが上がった。そういえばアメリカでは風邪と言ったらチキンヌードルスープ。缶 スープが冬はよく売り切れていたっけ。

 私の日本語教室のモットーは「すぐに役に立つことを楽しく分かり易く教える」だ。旬の素材や生徒からの質問で「これを知っているといざと言う時困らない・生活に役立つ」と言うのが最優先になる。教科書は使う事は使うが補佐的なもので、進行の指針程度。だから授業はすぐに脱線する。
 しかし教科書の内容を習っている時よりも生徒の食い付きは断然よくなる。やはり知りたい事が学びたい事なのだ。そして生徒にたくさんの情報をインプットしたら、今度はなるべく多くの情報をアウトプットさせる…つまり生徒に自分の事や意見、自分の国の事情などを話してもらうのである。

 ある時ひどい風邪をひき、咳と微熱としゃがれ声で授業に臨んだ私は「これは風邪の症状の表現を教えるのに絶好のチャンス!」とばかり咳、痰、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、悪寒等の語彙や「頭がガンガンする」「背中がザワザワする」等の擬態語表現を教えた後、「節々が痛い」「3日前から咳がでるんです」等病院で症状を説明する会話の練習をさせた。それから風邪をひいていそうな生徒に一人ずつ症状を聞いていった。咳と鼻水で顔をくしゃくしゃにしているタイ人の生徒の番になった。彼女は開口一番にこう言った。
 「先生、私のは風邪じゃないんです」。「風邪じゃない…じゃ何ですか」。「私フカンショウなんです」。「…フ…」。一瞬言葉を失った私と同様にどうリアクションしていいかわからず戸惑うクラスメート。異様な雰囲気を察した彼女は自分の言葉を反芻し「あっ、間違いました!カフンショウです!」。クラスが一斉に笑い転げ爆笑の渦と化した。

 杉花粉が飛び始めるこの季節、毎年彼女のことを思い出す。耳にはあの日の笑い声。みんな日本で幸せになって欲しいなと思う。笑いあり涙ありの日本語教師。3日やったら止められない。
(日本語教師)

 日々の新聞は今号から6年目に突入しました。「現場主義を貫き、伝えたいことをより詳しく、わかりやすく伝える」という編集方針は変わりませんが、これから重視していきたいのは、社会の中での素朴な疑問をすくい上げ、それを当事者にぶつけてみんなで考え合う、ということです。編集室と読者をつなぐ「往復書簡」のコーナーは、その一環です。
 たった3人の編集室。毎号新鮮な気持ちで新聞づくりと取り組んでいるつもりでいても、紙面 や文章の陳腐化・膠着現象は知らず知らずのうちに進んでいきます。それを指摘し、打開してくれるのが読者の率直な意見です。
 声を出したくても出すことができない市民の背中を押し、その声なき声を紙面 に反映すること。それも本紙の役割のひとつだと思っています。

(編集人 安竜昌弘)



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