田人支所から県道勿来・浅川線を奥に11キロ入ったところに田人町貝泊地区がある。古殿町と鮫川村に接する山間の地域で、人口は190人(昨年12月末現在)、うち65歳以上が77人、高齢化率は41%。いわき市内で最も高齢化が進んでいる田人町の中でもひときわ高い。今、人々の最大の悩みは地元の貝泊小学校がなくなってしまうこと。3人の6年生が20日に卒業すると、在校生も、入学見込みの子供もいない。1年前から、貝泊を知って、転居してきてもらう活動を本格的に始めているが、朗報はまだない。
貝泊は農林業で生計を立ててきた地区。林業が盛んだった昭和30年代には600人ほどの住民がいた。しかし現在、ほとんどが他地区に通
勤していて、平日、畑仕事をしているのは60〜70歳代の高齢者。10年ほど前から、結婚する子供のために植田町などに土地を買ったり、子供の小学校入学に合わせて家を建てて引っ越す家庭が目立ってきた。
「小学校がなくなる」という危機感は3、4年前から地区にあった。PTAなど有志が、里親や東京の子供を対象にした林間学校を試みたが、思うように進まなかった。そのうちに地区の最年少が小学5年生3人になっていた。「何かしなければ」。その思いから、1年前に貝泊コイコイ倶楽部を誕生させた。
全戸から活動資金を募り、地区あげての「貝泊においでよ」活動。
まず貝泊を知ってもらうために戸草渓谷を整備、耕土の清水をPRし、地場産品の直売所を造った。1ヘクタールの土地を千本桜公園
にするめに、オーナーも募集している。農家の空き家を安く貸す事業も始めた。水汲みに、直売所に多くの人が訪れ、空き家にも4人が移り住んで来ている。しかしまだ、小学校の存続にはつながっていない。
このままの状況が続けば、貝泊小学校は4月から休校になり、15年度内の通
学地域審議会で廃校までの猶予期間などが検討される。廃校になれば、その後、地区内で子供が生まれたり、小学生が引っ越してきても、再び貝泊小学校を開校することはできない。貝泊の場合、小、中学校が併設されていて、3年後には中学校も休校、廃校に追い込まれる可能性がある。
分校を除いて、これまで市内で廃校になった小、中学校はない。
貝泊小学校の廊下には6年生3人が描いた絵がはってるある。1枚は直売所、もう1枚は教室から見える風景、そして両手のひらに大事にのせられた校舎の絵。「永遠」と名づけられたその絵には「私たちの学校がいつまでも永遠に残ってほしい願いをこめてかきました」
と、児童のコメントが添えられている。3人は自分たちの代で小学校がなくなってしまうかもしれないこと、地区の人々がみんなで学校をなくさないために頑張っていることを理解している。
「住んでいる人が自分でこういう状況をつくった。学校は地区で生活していくのに必要な施設。なくなったら、ますます過疎化する」。コイコイ倶楽部事務局長の蛭田一さん(50)は言う。蛭田さんも貝泊で生まれ、貝泊小、中学校で学び、働き、暮らしている。「とにかく学校を後世に残したい」。蛭田さん、そして貝泊に住む人々の悲願だ。正念場は続く。 |