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 梅乃さんが天平と初めて会ったのは、昭和24年12月24日のクリスマスイブ。その日、神田神保町のバー「らんぼお」で「歴程詩の会」が開かれており、教え子の宮崎恭子さん(のちの仲代達矢夫人・故人)と一緒に集いに参加したのだった。

 このエピソードは、梅乃さん自身が書いているのだが、なかなかいい。会場は昂揚し、次から次へと歌が歌われた。梅乃さんはその場で、サモアの恋の歌をサモア語で歌った。

 「サモアの恋の歌」。それはどんな歌なのだろう。しかもなぜ、サモアの恋の歌なのだろう。そんな素朴な疑問を、梅乃さんにぶつけたことがある。すると梅乃さんは「弟がね、そういうのが好きで持っていたもんだから、聞いていたんです」と教えてくれた。

 ちなみに、他の出席者は「ラ・マルセイエーズ」などを歌っており、宮崎さんもシャンソンをフランス語で歌ったのだった。しかし、そのサモアの恋の歌が、天平の記憶に強く刻印され、梅乃さんと天平の運命の糸が絡まっていくことになる。

 その、サモアの恋の歌を思いもかけず聴く機会が訪れた。文藝 春秋社に勤めるかたわらチェロを弾いている星衛さんが、梅乃さんの記憶を頼りに譜面 に落とし、メロディーをよみがえらせたのだ。とっても短くメロディーラインもシンプルだが、何ともほのぼのとしていて、人間の心のひだに染みいるような曲だった。

 以来、星さんは天平の詩と朗読の集いでは、この曲を最初に弾くことをルールとする。集いではその「サモアの恋の歌」が、天平の霊との邂逅へと誘い、出席者それぞれの思い出や思いが、心の中で膨らんで行く。






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