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「音楽は聴衆と一緒に楽しむもの」。溝井麻佐美さんは言う。格調や権威ばかりが鼻につくクラシックの世界、演奏家のためだけの一方通
行の演奏…。そうしたものに疑問を感じ、8年前から「グループ音楽の捧げもの演奏会」を毎年開いている。ライブ感や心地よさを大切にし、ひとりでも多くの人と音楽の素晴らしさを共有できたら―。それが麻佐美さんの願いだ。
中学時代に100メートル12秒8で駆け抜けたスプリンター。高校進学が現実のものとなったとき、5歳から習っていたピアノの方が優先された。自分の意思とは別
のところで流れが音楽へ音楽へと向き、毎週レッスンのために東京へ通
う日々。そして、桐朋女子高音楽科から桐朋音楽大音楽学部演奏学科ピアノ専攻へと進んだ。
音楽は好き、だけどクラシックは好きじゃなく、練習も嫌い。音楽より一般
教科の方が好き。そしてとことん追求しなければ気が済まない。「ここは私がいる場所じゃない」。そう思ったのは一度や二度じゃなかった。そして、それを振り切ったのは「自分は人間学が勉強したいんだ。そうだ、それを音楽から追求すればいいんだ」という思いだった。
「音楽の捧げもの演奏会」は麻佐美さんが企画し、知り合いの音楽家を呼び、一緒に演奏しながらトークを交える。テーマは「音楽のレストラン」「旅」「郷愁」「オペラ」などさまざま。オーケストラが奏でる壮大なシンフォニーも歌劇もピアノで表現し、音楽を身近なものとして感じることに主眼を置いている。
「音楽って競争するものじゃない」。そう麻佐美さんは言う。そして、テクニックとはあくまで内面
、芸術性を伝えようとするもので、目的ではなく手段に過ぎない。
こんなことがあった。ある曲を依頼され、「それは弾けません」と断ったことがある。作曲家の内面
に入り、その音を理解し、音に意味をもたせることができない。今の自分にはそれは無理だ、という意味で言ったのだが、「技術的に弾けない」と思われてしまった。演奏とは、テクニックではない、人生観というか、音楽性なんだ、とつくづく思う。
「好きなピアニストはグレン・グールド。言葉では説明できない。いい演奏会? すぐ帰ってピアノを弾きたくなる演奏会かな」。目が輝いた。 |
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