omb489号

 紙面を読んで From Ombudsman489 

 

画・松本 令子

 

 藤田 忠平

 

 「日々の新聞」はおもしろい。時々、こういう人がいるよと紹介してくれる記事があって、興味深い。6月30日発行の第488号にも「放棄地の棚田に水辺をつくる」という記事が載っていた。この人は二十数年前、自宅近くの耕作放棄地を借りて水を引き、和めだかを放した。これがビオトープ「めだか農園」の始まりだった。本格的に始めたのは6年前で、小玉川からの水路の水を取り入れ、ビオトープを通し、最後は夏井川に注ぐようにした。
 水辺を造ったことで、カワセミ、カモ、キジをはじめ、2000㎞にも及ぶ旅をする蝶として知られるアサギマダラなどが来るようになり、チョウトンボ、オオルリボシヤンマなどのトンボ類もたくさん棲息するようになったそうだ。
 めだか農園の吉田伸さんは、もともと浪江で育った人で、3人の子どもが巣立った頃、「これからは好きなことをしていこう」と会社を辞め、小川町に家を建てて、「めだか農園」を造った。農園を維持していくのは大変だけれど、小鳥がさえずり、風が渡ると植物のいい匂いがして、ここでの暮らしをとても気に入っていたという。私はこの人の言動に共感し、読み進めていくと。私自身の少年時代の夏の日が鮮やかによみがえってきた。
 一方で、中央紙が書かなくなった、あるいは書けなくなった社会的な問題を忌憚なく記事にしてくれることも有り難い。原子力発電の危険性を訴え、原発をとめた裁判長の意見やALPS処理水の海洋放出に関するコラムは、真摯な気持ちで読んでいる。
 広告欄もおもしろい。「なぜこの国を運営する人たちはこれほどまでに危険な原発を推進するのか」という坂本龍一さんの言葉を、歯科医院が広告として載せた。ストレスクリニックの広告はアイロニーが効いていて、思わず噴き出してしまうことがある。さまざまな人の応援があって「日々の新聞」は発行されている。これからも楽しく読んでいきたいと思う。

(ギャラリー経営・北茨城市在住)

 

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