紙面を読んで From Ombudsman | 495号 |
齋藤 貢
昨年(2022年10月)、日本詩人クラブの例会が東京で行われた。例会のテーマは「戦争・原発事故・韓国の詩」。詩人の佐川亜紀さんと私の対談だった。佐川さんは、小熊秀雄賞や日本詩人クラブ賞を受賞し、原発事故を告発する詩も書いている。また、『韓国現代詩小論集』(2000年刊)を出版し、韓国の詩と詩人にも詳しい。
ロシアの戦争では、ウクライナの原発が軍事的な標的になるなど、平和利用である筈の原子力が軍事的戦略に利用される危険性を衆目に晒した。『チェルノブイリの祈り』を書いたスベトラーナ・アレクシェービッチは、「軍事利用の原子力も、平和利用の原子力も共犯者で、どちらも等しく人を殺す」と語る。これからは軍事的な標的にされる原発の危険性にも危惧を抱かなければならないだろう。
2021年4月13日に海洋放出が決定した「汚染水」について、「日々の新聞」は、当時から現在まで、専門家の意見や考えをわかりやすく伝えてくれる希有で貴重な媒体である。マスコミは、海洋放出する水のことを「汚染水」とは決して呼ばない。「処理水」と表現されることによって「汚染水」の汚染の実態が消え、あたかも安全な水であるかのように私たちを錯覚させてしまう。言語レトリックの、これが恐ろしさでもある。
例会では、参考資料として「日々の新聞」第469号(2022年9月15日付)と第450号(2021年11月30日付)を使用した。なぜ海に流してはいけないのか。それは、食物連鎖による環境汚染が懸念されるからである。ひとが自然を汚すことへの警告という論旨に強く共感を覚えた。
(福島県現代詩人会会長)
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