021回 Presents

大越 章子

 

画・松本 令子

贈って、もらってわくわく

Presents

 新聞広告で見かけて、角田光代の『Presents』を買った。「女性が一生のうちにもらう贈り物」をテーマに12の物語が描かれた本で、初回本だけ包装紙に包まれている。毎日寝る前に一話ずつ、ゆっくり楽しんだ。
 20代初め、「Presents」と名前をつけた日記帳に日記を書いていた。日記帳といってもコクヨのキャンパスノート。中学時代はハードカバーの正真正銘の日記帳、高校時代は親友と交換日記をしていたからカラフルでおしゃれなノートを使っていたけれど、大学浪人中に日記にはキャンパスノートが最適なことを発見した。 
 真っ新なキャンパスノートを買ってくると、まずノートに名前をつける。All roads be lead to ○○大学とか、不思議な時間、おいしいお茶の入れ方など、その時々、思い思いに。そして、いろんなことを書く。日々のできごと、ラジオから流れた音楽、書き留めておきたい言葉…。気になる新聞記事を貼りつけたり、絵を描いたりすることもある。 
 書いた日記を読み返すことはほとんどない。過去の日記帳を机の引き出しから出すこともない。いまを記して、次のページをめくる。それでも、角田光代の『Presents』の新聞広告を見た時、愛用の水色のキャンパスノートが浮かんだ。「あっ、同じ」。そう思った。
 贈っても、もらってもドキドキ、わくわくするプレゼント。たぶん、毎日がそういう日々でありますように、と願いを込めてノートの表紙に書いたと思う。久々に開いてみると、きれいに見えた初日の出や、「風邪薬です。早く直して」と遠くから速達で届いたカセットテープ、「医はこころ」と熱く語った教授、リチャード・クレーダーマンのコンサート、土のついた野菜の宅急便のことなど、いろんな贈り物のはなしが書かれていた。 
 『Presents』のあとがきで、角田光代は「私たちは膨大なプレゼントを受け取りながら成長し、老いていくんだと思います」と書いている。プレゼントという言葉は特別 だけれど、私たちは毎日、さまざまな贈り物のやり取りをしている。
 記者の仕事を始めてから、日記はまったく書けなくなった。でも新年を機に、新しいキャンパスノートを買って、久々に再開したい。いま、ノートにつける名前を考えている。   
 

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