027回 朝のスープ

大越 章子

 

画・松本 令子

おいしくて、元気がでるもの

朝のスープ

 このあいだの朝、玄関に摘み立ての春菊が山盛り入った手つきかごが置いてあった。近くに住む親戚が、畑で朝摘みしたのを持って来てくれたらしい。使い込んだ手かごが何とも粋で、寝ぼけ眼でしばらくボーっと眺め、春菊のにおいを嗅ぎながら、お昼にうどんをゆでて天ぷらにするのもいいなぁ、おひたしやサラダ、夕食はお鍋かなぁと巡らした。
 庭でとれた唐辛子を束にして台所の棚の取っ手に下げてみたり、このごろ、そういう食べ物のことが楽しい。 

 晩秋から初冬に入り、ひんやりした台所で朝食の準備をしていると、熱々のスープがこいしくなる。わが家の朝食は、例えばパンを買い忘れてホットケーキを焼くなど、その時々で少し違うけれど、基本はトーストと卵料理、サラダなどの野菜、果 物とヨーグルト、それにコーヒー。だからみそ汁でなく、湯気立つスープがほしくなる。
 でも大好きな料理研究家、辰巳芳子さんの『あなたのために』に紹介されている野菜のコンソメやさまざまポタージュ、玉ネギのスープ、ポトフなどというわけにはいかない。むらしたり、ぐつぐつ煮たり、ゆっくり時間をかけてできあがるのが辰巳さんのスープ。夕食後に下ごしらえをするとしても、慌ただしく動いている朝にはとても難しい。
 それでも玄米スープは別。玄米を炒ってさえおけば40分ほどでできるので、家族が体調を崩した時などに、たまに朝につくっている。材料は玄米と昆布、梅干し、それに水だけ。梅干しを使うので、ホーロー鍋でことこと煮る。
 辰巳さんが「煎じ薬」と言っている玄米スープは、105歳で亡くなるまで絵を描いていた小倉遊亀さんも晩年、毎日食していたという。スープの香りに誘われて、元気な人用に土鍋で白がゆも炊きたくなる。そして、スープを漉して残った玄米かすは皿にのせて庭に置いておくと、鳥たちがついばみに来る。

 さてさて、朝の熱々のスープは時間がかからず、おいしくて、元気が出るものがいい。いま、レシピ本を見ながら研究中で、12月から日替わりで毎朝、いろいろなスープをテーブルに登場させられたら、と思っている。フードプロセッサーを使って、春菊スープもありかもしれない。 
 

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