089回 秋をあるく

大越 章子

 

画・松本 令子

自然に身を置き五感をとぎすます

秋をあるく

 地方ニュースで毎日、県内の紅葉情報が伝えられる季節になった。「色づきはじめ」や「青葉」がまだ多いなか、磐梯吾妻スカイラインや安達太良山はすでに見ごろのよう。震災前はこの時季、早起きをして高湯側から吾妻スカイラインを走り、白樺の峰、つばくろ谷、天狗の庭など所々で車から降りてパノラマをしばらく眺め、浄土平に向かった。 
 浄土平ではリュックを背負って湿原の木道を歩き、酸ケ平から経て一切経山に登り、魔女の瞳(五色沼)を見ながら昼食をとり、再び酸ケ平に戻って鎌沼をぐるり回って下りてくる。若いころ山男だった父との恒例行事で、先に鎌沼を巡るなどその年によっていくらかコースを変えながら、吾妻を1日歩いて秋を体感していた。
 ただただ登り、歩く。耳をすまし、空を見上げ、風を感じ、深呼吸して山の空気を体いっぱい吸い込み、高原植物に足を止め、すれ違う登山者とあいさつを交わす。歩き慣れた風景でも小さな発見はあって、それが楽しかった。

 震災後は2年控え、父の年齢を考えて裏磐梯のトレッキングに変えて、昨年から秋の恒例行事を再開した。新緑から初夏の裏磐梯は生命力があふれていてお気に入りだが、秋もしっとりしていて気持ちいい。
 五色沼の駐車場に車を止めて、檜原湖まで沼を巡って歩くコースで、高低差が少なく距離も3.5kmとほどよい。時々休憩をとってゆっくり歩いても1時間半ぐらいなので、気軽にトレッキングできる。
 まずは青緑色の毘沙門天沼。沼を見つめるように立つもみじのシンボルツリーが、秋に存在感を増す。それから、周囲の草木が鉄さび色に染まる赤沼、3つの色を持つといわれるみどろ沼、竜沼、弁天沼、場所によって色が変わる瑠璃沼、青沼と続く。途中必ず、たくさんのマイナスイオンを感じられる川べりでひと休みする。
 そしてカエデやウルシが美しく染まる柳沼まで来れば、ゴールはすぐ。磐梯高原駅のバス停そばの店で好みのジェラートを選び、檜原湖を眺めながらたいらげ、五色沼入口までバスで戻る。

 むかしむかし、日本の季節は4人の女神が支配していると考えられていたという。秋の女神は染色と織物が得意な竜田姫。山野を赤や黄色の微妙なコントラストで染め、その年の風合いで織りあげていく。そろそろ竜田姫は裏磐梯のトレッキングコースの染色にも取りかかるころ。紅葉情報と天気予報を見ながら、今年も恒例の秋歩きをして来ようと思っている。

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