101回 マーチングフェス

大越 章子

 

画・松本 令子

楽器で歌うミュージカルのよう

マーチングフェス

 9月最後の日曜日、早起きして福島市に出かけた。あづま総合体育館で開かれた、マーチングフェスティバル(県大会)を見るためで、途中、東北道の安達太良サービスエリアで朝食をとり、開会の30分前には会場に着いた。思いのほか観客席はまだ閑散としていて、招待席の隣の列の前から3列目の空いている席に座った。
 マーチングのことは、ほとんど何も知らない。「行進しながら楽器を演奏する」くらいのイメージしかなく、2009年に横浜で見た開港150年記念のパレードや、昨年公開された映画「MARCHING 明日へ」が頭に浮かぶ。独特のコスチュームなので、歴史的にはたぶん、軍楽隊にさかのぼるのだろう。
 その日は、フェスティバル常連のちいさな小学校のマーチングが目的だった。「みんなでマーチング」を合い言葉に、毎年、4、5、6年生が全員で取り組んでいる。上級生から下級生へと伝統のように受け継がれ、保護者はもちろん地域の人々も存続に協力し、子どもたちは年に何度も地域の行事でパレードをする。

 フェスティバルは午前と午後で大きくふたつにわかれていた。午前はバンド(吹奏楽)、午後はマーチング。バンドにはいわきからも平三小と錦小が出場した。いわきと交流のある沖縄を音と動きで表現した平三小、錦小はちいさな等身大の物語をファンタジックにまとめ、音はもちろん視覚的にも楽しく、洗練された美しさが印象に残った。
 一方、マーチングは幅が広く、一般的なイメージの、幾何学的で計算された動きのマーチングは中学生以上で、小学生はミュージカルみたいな感じ。歌を楽器演奏に変え、旗や大道具を使った演技とも言える動きが加わり、ひとつのストーリーを展開する総合芸術に思えた。
 背景画や大道具、コスチューム、演奏中に何度も持ち替えられるデザイン的な旗、時にはダンス、時にはアクロバットみたいな流れるような動き、そして演奏。それも縦横無尽に動き回りながら、楽器を奏でなければならない。乱れのない美しいフォルムで、澄んだ心地よいハーモニーを響かせ、すべてを調和させる。
 プログラムが進むにつれ、魔法にかかったようにマーチングに魅了された。

 そのなかで、おめあての小学校は空をテーマに、ベーシックなマーチングを大切につくり込んだ。
 子どもたちが暮らす地域は冬が厳しく、地吹雪で1m先も見えなくなることもある。その分、春の訪れは日いちにちとはっきり実感でき、春から秋はとにかく美しい。季節を無意識に体全体で感じていて、その風土がマーチングにも表れている。
 全員参加なので得手不得手もあり、バランスを上手にとるのにたぶん苦労しているだろう。でも子どもたちの気持ちがぴったり合った時には、想像をはるかに超えたマーチングになる。
 これから機会あるごとに、追っかけをしてみるつもりでいる。

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