012回 クリスマス絵本

大越 章子

 

画・松本 令子

だれかがだれかを思うものがたり

クリスマス絵本

 「そろそろサンタに電話をするけれど、プレゼントは何がいいのかしら?」。子どものころ、12月になると決まって、内郷に住む祖母にそう聞かれた。孫たちにとって、祖母はサンタクロースと直接話ができる唯一の存在で、それまでにたくさんある欲しい物の中から“今年のプレゼント”を考えておかなければならなかった。 
 祖母に伝えても、いつも実現するとは限らない。サンタは気まぐれで、従兄弟の言葉を借りれば「手抜きの大ハズレ」の時もあった。でも「これは無理かもしれない」と内心思いながら頼んだものが、クリスマスの朝、目を覚ますと枕元に置いてあることもあった。 

 ある日、従兄弟の1人が「サンタは本当にいるんだろうか。実はおばあちゃんがサンタじゃないか」と言い出した。家にはサンタが外から入って来られる大きな煙突はない。あるのはせいぜい、台所の換気扇口とお風呂の煙突ぐらい。プレゼントの入った袋を持ったサンタが入れるはずはない、というのが従兄弟の論だ。 
 そこでみんなで相談して、イヴの晩はそれぞれが寝たふりをしてサンタの正体をつきとめることになった。「いいか、寝ちゃダメだぞ」。気合いを入れて布団に入ったが、気がついた時は朝で、ちゃんと枕元にはサンタが訪れた証拠のプレゼントが置いてあった。何年か試みてみたが、だれも睡魔には勝てなかった。

 数年が経って『サンタクロースっているんでしょうか?』に出会った。100年以上も前に、ニューヨークに住む8歳の女の子が「サンタクロースって、ほんとうに、いるのでしょうか?」と、サン新聞社に手紙を送った。絵本には女の子の手紙と、その手紙の返事として書かれた社説が載っている。
 「サンタクロースがいるというのは、けっしてうそではありません。この世の中に、愛や、人へのおもいやりや、まごころがあるのと同じように、サンタクロースもたしかにいるのです。......サンタクロースを見た人はだれもいません。この世の中で一番たしかなもの、それはおとなの目にも、子どもの目にも見えないのです」
 手紙を送った女の子は、その社説をお母さんに読んでもらい、幸せな気持ちになった。

 この季節、本屋に行くとクリスマス絵本のコーナーをうろうろして、今年のクリスマス絵本を選ぶ。そうしていると、祖母のあの言葉を思い出す。「そろそろサンタに電話をするけれど、プレゼントは何がいいかしら?」。クリスマス絵本はとてもあたたかい。だれかがだれかを思う物語が多いから。 

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