014回 映画の時間

大越 章子

 

画・松本 令子

どこかへワープした違和感

映画の時間

 大晦日に「ハウルの動く城」を見た。新年を迎える準備に家族がばたばた動いている時に気が引けたが、年末年始の予定を考えると映画を見るならその日しかなかった。最初の上映時間に合わせてぎりぎりに映画館に入った。「たぶん空いている」という予想に反し、映画館は満席に近かった。
 つつましく暮らす帽子屋の18歳の跡取り娘がひょんなことから90歳のおばあさんになってしまい、そして魔法使いの美青年ハウルに恋をする――。そんな簡単なあらすじは知っていた。実際にスクリーンにおばあさんが現れると釘づけになった。
 曇りがちな表情の多かった娘が、しわしわのずんぐりむっくりのおばあさんになって大胆にいきいきと動き回り、言いたいことを言い、きらきら輝いていた。「いつでも、何でも思うことをすればいい。歳を重ねるのも悪くない」。おばあさんはそう語っているようだった。
 後半を急ぎすぎたり、もともと宮崎駿監督は作りながら先を考えるため、言われているようにわかりにくい映画ではある。でも細かいことを気にしなければ、楽しく気持ちのいい、元気をたくさんもらえる映画だ。2004年の終わりに、たっぷりエネルギーをもらった。

 どんなにビデオやDVDが普及しても、映画館で見たい映画がある。大きなスクリーンで見たいということだけでなく、その時、映画館の入口に飾られているほかの映画のポスター、上映が始まるブザーの音、だれと一緒に見たかということ、見終わった後に話したことや食べたものなどが、映画と一緒に記憶され、つながる。
 映画館には昼すぎに入って夕方出てくる時間帯が好きだ。風景も空気も、入った時と出て来た時とでは違っていて、どこかよそへワープしていたような違和感がある。その違和感を楽しみたくて、なるべく映画の時間は午後から夕方と思っている。帰り道を歩きながら、少しずつ夕方の風景になじんでいくのを感じる。「ハウルの動く城」のようにたまに、例外もあるけれど。 
 

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