018回 散歩のすすめ

大越 章子
画・松本 令子

いい一日の始まりに

散歩のすすめ

 5年前に犬のるんるんがわが家にやって来てから、家の周辺をよく歩くようになった。コースはいろいろあって、夏井川の土手まで出て川沿いのサイクリングコースを歩く南コース、住宅地をジグザグに歩くあみだくじコース、桜並木から田んぼのあぜ道、それから長い石段を上って神社にたどり着く見晴らしコースなど。相性の悪い犬に遭遇しそうになったり、「そっちに行かない」とるんるんが立ち止まって動かなくなったり、しばしばコースは変更になる。
 歩いていると、さまざまな発見がある。広場に続く小さなトンネルやちょっと変わったこだわりの家、ゆず畑...。新しい公園を見つけた時には、るんるんを滑り台で遊ばせようとしたが、階段を2、3段上っただけで拒否された。土手の草むらを思うままに歩かせた時は、険しいがさやぶに入り込み、アドベンチャー的なスリルを味わった。 

 さわやかないまの季節のお気に入りは、自然が一番感じられる見晴らしコースで、青葉の桜並木を通 り、苗の植えられた田んぼが広がるあぜ道を、かえるの声をBGMに歩く。途中、るんるんはもぐらの気配でも感じるのか、道にあいた穴に鼻を突っ込んで顔を泥だらけにし、たんぽぽのにおいを嗅ぎ、胃の調子を整える葉を食べ、雌にもかかわらず片足をあげて自分のにおいをつける。
 歩く速さはモデラート。ウォーキングの姿勢で、ひじを90度に曲げ、5メートル先を見て、かかとから地面に着ける歩き方を心がける。しかし、それもわが家を出発する時だけ。あちこち立ち止まり、寄り道をするるんるんのペースに調子は狂う。唯一、石段の上り下りだけはるんるんが譲歩し、ウォーキングペースを守っている。 

 体重が気になる一人と一匹の散歩はダイエットを期待してのウォーキングでもある。のらりくらりの散歩にその効果はたぶんないが、一人と一匹は階段の上り下りで多少は減っただろうと予測し、それで満足する。
 風を感じ、すれ違う人とあいさつし、神社にお参りして境内からまちをながめ、緑のにおいのする空気をいっぱい吸い込む。自分のまちの小さな再発見もたくさんあって、いい一日の始まりになる。

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