008回 海を見ていた午後

大越 章子

 

画・松本 令子

青い空と海と戯れる照島を楽しむ

海を見ていた午後

 ぽっかり予定の抜けた晴れた昼下がり、突然思い立って小名浜スプリングス&ゴルフ倶楽部のラウンジに出かける。照島がよく見える窓ぎわの席に座って、グレープフルーツジュースを飲みながら、まっ青に広がる穏やかな海と水平線、それに照島を眺める。
 平日の午後まっただ中のラウンジは静まり返っていて、BGMのクラシックがかすかに流れている。そこでは考えごとをしたり、物思いにふけったり、本を読んだりしない。ただぼっーと窓の外の海原を見つめ、緩やかな時間に浸る。水色のリボンをかけた自分への贈り物、そう思っている。
 荒井由美のアルバム「ミスリム」に入っている「海を見ていた午後」が似合う時間。―山手のドルフィンは静かなレストラン/晴れた午後には遠く三浦岬も見える/ソーダ水の中を貨物船がとおる―。ちょっと気だるい、それでいて爽やかな小一時間を過ごす。

 ラウンジからは青い海に浮かぶ照島が一番よく見える。だから、ごくたまに晴れた昼下がり、ラウンジに足が向く。久しぶりに照島に会いに行くという感じ。
 第三紀凝灰質砂岩の断崖絶壁の照島は、もともと陸続きが浸食されて島になった。崖が崩れたりして徐々に小さくなっているというが、ラウンジから眺める島はアシカやイルカのショーを見たり、流れるプールで泳いでいたころとあまり変わらないように思う。

 秋が深まるころにやってきて、新緑の時期に北へ帰るウミウの姿はもうない。子どもたちの声で賑やかになる夏休みまで、照島はしばしの静かな休息にのんびりしている。水色のリボンをかけた時間は青い空と海と戯れる照島を楽しむ時間で、“海を見ている午後”はラウンジで過ごす午後でなければならない。
 ほかにもいろんなリボンをかけた自分への贈り物を持っている。でも梅雨の晴れ間に最適な贈り物はやっぱり、水色のリボンをかけた昼下がりのひとときだ。

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