464号

巨大津波は想定外だったのか 464号

 東京電力の福島第一原発事故で被害を受けた住民たちや福島県内から避難している人々が国に損害賠償を求めた4件(福島、群馬、千葉、愛媛)の集団訴訟で、最高裁判所は6月中旬、国の責任を認めない判決を言い渡した。
 最高裁が原発事故の国の責任を判断したのは初めて。実際の地震や津波は予測よりはるかに大きく、防波堤を設置しても事故は避けられなかった可能性が高い、と判断した。ただ4人の裁判官のうち、検察官出身の三浦守裁判官は国に責任があったと反対意見を述べている。
 福島第一原発の事故は巨大な津波によって、非常用ディーゼル発電機といった電源設備や冷却用ポンプなどが浸水して使えなくなり、炉心を冷却できず稼働していた1、2、3号機では核燃料が溶け落ちるメルトダウンが起きた。定期検査中だった4号機は、3号機から水素が流れ込んで水素爆発が起きた。
 事故から9年前の2002年、国の地震調査研究推進本部は地震活動の長期評価で「福島沖を含む日本海溝沿いの領域ではどこでもマグニチュード8.2前後が30年以内に20%の確率で発生する」と指摘していた。
 それに基づき東電は2008年、福島第一原発には敷地内の高さ10mを越えて、最大15.7mの津波が押し寄せてくる可能があることを試算していた。実際に起きた地震はマグニチュード9で、想定された南東側以外の方角からも津波は押し寄せたが、地下にあった非常用ディーゼル発電機を高台に移すなど対策がとられていたら、事故はどうだっただろう。
 最高裁の判決のポイントは想定外の巨大津波で、事故以前の津波対策の基本は防潮堤の設置ということだが、ひとたび原発事故が起きればその深刻さは想像できる。まして原発は国策民営で進められてきたものだ。想定外ということで、責任は免れられるのだろうか。

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