259:気もそぞろ

 

気もそぞろ

 

 埼玉県立の彩の国劇場の近藤良平芸術監督と9月5日にに会いました。その日は近藤さんとのトークが彩の国劇場で午後7時からあり、2人で盛り上がったのですが、実は2人ともサッカーファンがゆえにトークの時間中に気掛かりなことが一つあったのです。日本代表と中国の試合が午後七時半キックオフだったのです。
 これは痛い! どおしてこのスケジュールになってしまったのだろう! それは私の日程調整のせいでした。ワールドカップアジア最終予選の初戦という大事な試合! そしてホーム開催! そして埼玉2002スタジアムでの試合! 同じ埼玉にいながら試合に行けないし、テレビ観戦もできないなんて…と、思いながらも近藤さんとのトークが始まりました。
 午後7時半になった時に、「近藤さん始まりましたね」と呟くと、「始まりましたね」と返事が返ってくる。「このトークをネット配信で見ながら、地上波でサッカーの試合を見ている人もいるだろうね」と思わず口走る。そこで私は事前に用意しておいたあるものを取り出しました。それはマッチフラッグプロジェクトというアート活動で制作したフラッグです。
 4年に1度のワールドカップの時に日本の旗と日本が対戦する国の旗を一緒にデザインした旗で試合を応援、観戦するというものです。つまり話を自然にアートからサッカーに持っていき、会場のお客さんとサッカーの話を展開する中で、試合展開の情報もさりげなく会話に入れていこうという作戦です。
 このライブ感溢れるトークは盛り上がり、試合も7対0と日本が圧勝する結果になりました。そしてその後の展開がまた面白いのです。この試合の5日後に私は彩の国劇場の稽古場でマッチフラッグを市民と共につくり、ワールドカップアジア最終予選の第2戦を応援することになったのです。ダブルブッキングのような、このスケジュールを組んでいたからこそ生まれてきたこの出会い。不思議なものですね。  

                                     (アーティスト)