第415号

415号
2020年6月15日
長久保赤水の「改正日本輿地路程全図」のいわき地方辺り(『りゅうのひかり』の見返しより)

 

閼伽井嶽に毎夜、海中から霊光が上る

 江戸時代の地理学者で漢学者の長久保赤水(せきすい)(1717-1801)は「改正日本輿地路程(よろちてい)全図」という地図などに、閼伽井嶽の龍燈のことを書き残している。「閼伽井嶽に毎夜、海中から霊光が上る」。龍燈という、その不思議な現象を耳にした赤水は長い間、それを気にかけ、湯本温泉を訪ねた際に閼伽井嶽まで行って、自身の目で龍燈を見たという。
 「改正日本輿地路程全図」のいわき地方沿岸に記されている、閼伽井嶽の龍燈についての記述を、医療創生大学客員教授の夏井芳徳さんは次のような現代文にしている。

 四倉沖の海で、毎晩、陰火が発生する。大きさは篝火(かがりび)ほどである。火は竈(かまど)川(現在の夏井川)を遡り、阿伽井嶽(閼伽井嶽)の麓に達し、大きな杉の枝に飛びつき、あっという間のうちに林のなかに消える。このようなことが次々と、夜の初めから、翌日の日の出時分まで続く。火は延々と、途切れることなく続き、その数は数えきれない。月明かりのある夜は光が弱く、月明かりのない夜は光がはっきり見える。この火は阿伽井嶽からしか見ることができない。他の場所からは一切、見えない。何とも不思議だ。そのため、この火は阿伽井龍燈と呼ばれている。
 
 赤水によると、龍燈は閼伽井嶽の燕石の上からしか見えない。四倉の浜から夏井川を遡り、閼伽井嶽の麓で大杉の枝に飛びつき、林の中に入り込んで消えたり、現れたりする。月明かりのない暗い夜には蛍の光ほどにも、篝火ぐらいの大きさにも見えたらしい。
 実は、その火は昼間も上ってきていたが、太陽の光で見えなくなっている。赤水が朝、明るくなって確認してみると、龍燈の経路のうち見える所には川などの水があり、見えなくなる所はものの陰になっているのがわかった。龍燈は、水に浮かんで上ってくるようだった。
 
 茨城県高萩市の時崎清さん(69)は歴史民俗資料館などで「改正日本輿地路程全図」を眺め、閼伽井嶽の龍燈の記述が気になった。高萩は赤水のふるさと。長久保赤水顕彰会の会員に現代文にしてもらい、絵本で表現したいと思うようになった。
 長い時間をかけて構想を練り、ようやく絵と文を完成して、この春に『りゅうのひかり』(長久保赤水顕彰会・発行)が発刊された。闇夜の海に現れた小さな光が集まって強い光になり、龍に姿を変えて川を遡り、山へ向かう。やがて空が白み始めると光は…。
 静かなものがたりを読みながら、江戸から明治にかけての閼伽井嶽の燕石からの風景に思いを馳せる。龍燈とは何なのだろう。いまもわからない。


 特集 龍燈伝説と閼伽井嶽

 閼伽井嶽は古くから信仰の地としてあがめられてきました。その歴史の中では様々な言い伝えが生まれました。なぜ閼伽井嶽と赤井岳があるのか、龍燈伝説はどこからきたのか、閼伽井嶽を巡る話を紹介します。

伽井嶽 常福寺住職 上野 宅正さんのはなし

 閼伽井嶽は十数年後に1300年を迎えます。長い間存在している理由と、これからも存在するためにはどのような取り組みをすべきか、常福寺住職の上野さんに聞きました。

関内 裕人さんのはなし

 関内さんは社報で閼伽井嶽を取り上げました。資料を調べるほど、いわきの中心には閼伽井嶽があったのではないかという気がしたそうです。

 記事

新型コロナウイルスのこと(6)

常磐病院院長 新村 浩明さんのはなし
 常磐病院はときわ会グループの病院です。新型コロナウイルス対策では、グループ内でコロナ専門病院を作るなど、独自の取り組みもありました。第二波に備えてマニュアルを作成し、練習もしているそうです。いつウイルスが持ち込まれるのかわからないので、三密をさける生活は必要だと言います。


鎮魂歌 レクイエム

新田目 建さん
2020年5月5日没 享年87

 弱い立場の人の盾となり、人間を魂で見続けた新田目さん。その人間愛にあふれた人生をたどります。


シネマ帖

ドリーム

 トイレは白人専用と黒人専用に分けられ、今より人種差別の激しかった1960年代、その時代にÑASAで働き、居場所を勝ち取った3人の黒人女性がいました。彼女たちの実話を元にしたサクセスストーリーです。


ペルソナ

Re.yoga Lotus代表 藁谷 弘子さん

 ヨガとは何か。それはエクササイズではなく、人間の本質、自然に生かされていることに気づくものである、と藁谷さんは考えています。ヨガはサンスクリット語で、つなぐ、結ぶを意味します。気持ちをコントロールし、自分と社会、自然をつなぎ、自身が宇宙の中のひとつであるということなのです。

 連載

戸惑いと嘘(49) 内山田 康
歩いて触れて触れられて考えてまた歩く(2)


阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(12)タブノキ


DAY AFTER TOMORROW(208) 日比野 克彦 
オンラインの世界
 

 コラム

月刊Chronicle 安竜 昌弘
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