第491号

491号
2023年8月15日
 土俵で質問に答える右から若元春、錦木、宇良の三力士

  ぼくにできるのは土俵でがんばる姿を見せること

 

 大相撲の夏巡業「楢葉場所」が8月4日、ならはスカイアリーナで行われ、ご当地力士の関脇、若元春(福島市出身)に熱い声援が送られた。

 若元春は祖父(若葉山)、父(若信夫)、兄(若隆元)、弟(若隆景)が力士という相撲一家。本名は大波港で、父・政志さんによると、大きな波を「渡」(若隆元)ってどこまでも突き進み、どんな波も「港」(若元春)で受け止める。「渥」(若隆景)には、「その大きな波をつかんでほしい」との願いがあるという。アマチュア時代から「大波三兄弟」として知られ、その四股名は戦国武将、毛利元就が3人の息子に託した「三矢の訓」からとられた。

 2011年3月11日、学法福島高校の2年生だった若元春は、震災と原発事故を体験した。若隆景も同じ高校の1年生で、ともに相撲部員。しかも地震で土俵が壊れ、稽古ができなくなってしまった。長男の若隆元はすでに荒汐部屋に入門していたこともあり、2人は約1カ月にわたって荒汐部屋で避難生活を送った。被曝を心配した親方が声をかけて呼び寄せたのだった。

 「楢葉場所」では申し合いやぶつかり稽古が披露され、若元春の一挙手一投足が注目された。大関昇進を狙った先の名古屋場所では9勝6敗に終わったが、本人は「実力という面で足りていなかった。毎場所が勉強だと思っている。稽古や実戦を通して、しっかりと力をつけていきたい」と話した。
 左四つの型を持ち、右上手を取ったら負けない正攻法の相撲。弟の若隆景同様、その所作は美しく、初代・若乃花を彷彿させる。大型力士全盛のなか、さらに力をつけて上をめざしてもらいたいというのが、福島県民の願いだ。
 錦木と宇良とともに土俵に上がって子どもたちの無邪気な質問にも答えた。奥さんは知人の紹介で知り合った年上の女性であること、プロレスが大好きで黒いまわしもそれにちなんでいること、立ち会いは支度部屋で考え、とっさに変えることはしないこと…。やんちゃで照れ屋だが随所に風格を感じさせる、そんな若元春だった。

 記者会見で「福島県の浜通り、楢葉という被災地で巡業をしたことについてどう思いますか」という質問が出た。若元春は「ぼくもあのときは高校生で福島にいました。自分には土俵でがんばることしかできないので、そういう姿を見ていただければ」と答え、浜通りでの思い出にふれた。
 若元春によると、子どものころから相撲、相撲だったが、父の政志さんが釣り好きなので兄弟そろって海水浴に来たことがあるという。場所がどこなのかが気になったので、政志さんに尋ねてみたら、南相馬市の「原町シーサイドパーク」(北泉海浜総合公園)だという。その思い出の海にはいまも、震災・原発事故の影が消えることなく残っている。

 


 特集 海洋放出 より深く知る

 

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海洋放出がいつ終わるのか見通しは立たない
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宮城からの報告
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 記事

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「ささめやゆき物語」が9月10日まで、仙台文学館で開かれている。会場では、これまでに描いた絵本の原画やなどが展示されている。7月22日にはささめやさんのトークがあり、自らの絵本のことや絵を始めたきっかけなどを話した。

好きなことをしていればなにかがみつかる
アートが持つ力
絵を描くということ
『マルスさんとマダムマルス』のこと
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仙台市文学館で話すささめやゆきさん


 連載

DAY AFTER TOMORROW(246) 日比野 克彦
小値賀島となでしこ
初めて来た土地の知識が知恵になっていく 

阿武隈山地の万葉植物 湯澤 陽一
(85)ヌルデ