302号 ラグビー余話(2015.9.30)

画・黒田 征太郎

仲間意識を最優先どこのだれでも一緒に走りぶつかる

 ラグビー余話

 スポーツの秋。とはいっても積極的に体を動かす方ではない。せいぜい愚犬の散歩と旅行での散策ぐらい。あとは家でぐうたらしながら、テレビやDVDを見ている。読書も好きだが目が見えにくくなってからは、とみに面倒になり、「積ん読」に拍車がかかった。だから、スポーツは、見て楽しむ派だ。
 プロ野球のペナントレースが大詰めを迎え、ラグビーのワールドカップ開催中とあって、目が離せない。プロ野球の方は、ひいきの楽天が低迷、阪神も3位につけてはいるが、いつものように終盤に来て息が切れてきた。自然とラグビーに目が向く。
 優勝候補の南アフリカに競り勝ち、「いける」と臨んだスコットランド戦ではミスが出て完敗した。これで予選リーグ1勝1敗の勝ち点4。残るサモア、アメリカ戦でどんな戦いができるかが、ベスト8進出への鍵を握ることになる。過去に1勝しかしていなかったことを思えば、現時点で大健闘なのだが、強化を実感して大会に入り、南アフリカ戦で結果を出しただけに、つい期待してしまう。
 メンバー31人のうち10人が外国人選手、というのが話題を集めている。南アフリカも黒人選手の使い方について批判が出ているというから、国旗や国歌を誇りに国を背負って戦う国際試合というのは、必要以上にナショナリズムを意識させるものなのだろう。それが人種差別にまで発展すると、スポーツをする意味などない。
 以前、全日本や神戸製鋼で活躍した大八木淳史さんがこんなことを言っていた。
 「ラグビーは、プレーしたいやつがプレーしたいところでできるスポーツ。だれでも、やりたいやつがボールを持って走り出せばいい。その自由な精神が魅力といえる」
 確かに、その起源はイギリスのエリス少年がフットボールの試合中に突然、「手は使えない」というルールを無視し、ボールを持って走り出したこと、と言われているから、うなずける。ラグビーというスポーツが愛されるのは、仲間意識を最優先する自由さがあるからなのだろう。そういう意味から考えると、松尾雄治さんなどは、その典型だった。
 さて今後の展開。残り2試合に全勝しないと、目標である決勝トーナメントには進出できない。ポイントはサモア戦になるのだろうが、相手を焦らせるような試合が求められる。反則を減らし、きちんとペナルティーゴールを決めて追いすがり、接戦に持ち込めないと、スコットランド戦のようになる。
 いままさに、秋の夜長。しばらく夜ふかしが続く。

(安竜 昌弘)

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