病院事業管理者になって1年半がたった。この仕事をやってみての感想は組織が大きいので、考えて動き出すのに時間がかかるということ。ただ、ちょっとした改善で直ってくるところもある。姿が見えるし患者さんの反応があるのでそれが楽しい。
病院事業管理者というのは、市立総合磐城共立病院と常磐病院についての権限を市長から付託されたということ。これまでは設置者である市長にお伺いを立てなければならなかったが、すべての権限を持たされたことでフレキシブルに動ける、ということ。ある意味ではそれが魅力で、その分風通
しがよくなったと思う。
人の採用もできる。新たに何人採用するか、コメディカルをどうするか、自分の判断でできる。これまでなかった試みとして、この四月に公募によって民間病院の事務経験者を2人採用した。公立病院の弱点は、定期的な人事異動が必要なために実務のプロが育ちにくいことだと思っている。医療事務を民間に委託しているがどうしても任せっきりになってしまう。それは財布を預けっぱなしにしているのと同じで、細かいところのチェックや判断がしにくかった。
医療請求と病院運営に詳しいプロが二人加わったことで、これまでのやり方や不都合なところがチェックできるようになり、病院事務経験の少ない職員が、わからない部分を遠慮なく聞けるようになった。それは結構大きい。
確かにかたち的には「病院を統括する」という権限を持たされたことで、自由に病院経営を行っていた、かつての畠山体制に戻った、といえるかもしれない。しかし当時とは医療を取り巻く環境も時代も違う。そのころは右肩上がりで患者数が増え、医師や看護師をどんどん多くすることができる時代だった。公共性と経済性のバランスなどということを気にしなくても、来る患者にきちんと対応していれば何の心配もなかった。患者を集めれば職員を多くとっても何とかなった。いまは医師不足が深刻ですべての診療科目を維持することができず、結果
患者が減って収入が思うように上がっていかない、という悪循環に陥っている。
平成十九年の決算が出たが、収入は六億から七億円増えている。しかし出ていくものが増えている。その最たるものが退職金でこれから三年ぐらいは厳しい状況が続く。今回の赤字額は共立が十八億、常磐が五億程度で計二十二億円だった。
相変わらず医師不足も深刻で、毎年十人ぐらいずつ減っている。かつて十四人ぐらい来ていた研修医の数が減っていることが大きい。研修に来れば何人かは残るが、絶対数が少ないと残る人の数もぐんと減る。その原因は交通
の便が悪いなど、地理的条件。神経内科など休診になっている科があること。研修生はどうしてもすべての診療科目がある病院に行きたがる傾向がある。
医師が辞める原因としては@医局である大学の事情A拘束時間が長い病院勤務に疲れて開業するB給与をはじめとする処遇の問題、など。公立病院の場合、給与体系は変えられないから手当で調整するのだが、限界がある。住環境、まちの魅力などに物足りなさを感じる人もいる。そして、ほとんどの医師が何も言わないで辞めていく。
「拘束時間の長さ」は市民のコンビニ受診とも関係してくる。病院は基本的に昼患者さんが来るように態勢が整えてある。急病の場合は仕方ないが、「昼来られなかったから」と、平気で時間外にやってくる市民がいる。医師不足、特に内科医が少ないために副院長まで日勤しているのが現状なので、疲れがたまり疲弊していく。「医療を守るためにも節度のある受診を心がけてほしい」と再三にわたって市民にお願いしている。
いわき地域の医療を見てみると、医師数、職員数、ベッド数などすべて共立病院が突出している。だからこそ期待されるのだろうが、医師不足はいかんともし難い。院長や診療科長などがツテを頼って地道に医局などにお願いしているのだが、大学そのものに医師がいない。これは全国の公立病院の悩みで、医師がきちんと充当されれば経済性の問題も解決する。医師を一人でも多くすることが健全経営へとたどりつく道なのは間違いない。
これからは住民の要望にどこまで応えて経済性と公共性をマッチングするかが永遠の課題だと思う。例えば、滅多にない症例のために設備や人員を確保している不効率性。それらはきちんと市民に説明して、ある程度の線で切っていく必要も出てくると思う。医師が安定的に供給される国のシステムが、一日も早くできることが求められているわけだが、現時点では病院自体はもちろん、市民の努力も求められているのだと思う。
今年度中には、公立病院のあり方をどうするか、これまでの検討結果
をお知らせできる。 |