五月十日に開かれた市立病院と地域医療を守る市民集会。常磐病院院長の江尻友三さんと、いわき市医師会会長の木田光一さんがそれぞれ病院やいわきの医療の現状などを話した。
構造的な問題で続く赤字
常磐病院院長 江尻 友三さん
常磐病院は昭和38年に診療所からスタートし、最も多い時で四百床ありました。ところが市が「一市一病院」の方向性を打ち出し、医師の確保が難しくなりました。医局に医師の補充をお願いしても、将来性のある病院にしか医師は出しません。週何回かの応援で、医師の補強をしています。
医療としては急性期、在宅、救急、温泉を使ったリハビリなど。平成19年の市内の救急医療の状況を見ても、常磐病院にはいわき市全体から救急車が入っています。通
常の時間内に他地区からの搬送はありません。しかし夜になると増えます。時間外が圧倒的に多いです。
平成7年、市は一市一病院に向けての検討を始めました。翌8年には好間病院が民間に委譲されました。13年から3年間、市立病院の現状と将来のあり方を考える懇談会が持たれ、一市一病院の方向性を探りました。18年、市立病院改革にかかわる基本方針が策定され、当面
は一市一病院2施設でいくことが決まりました。
その話し合いの際、わたしは「いわき市民病院」など一つの名前にして本院、分院の形にしてほしいと言いました。医局から医師が派遣された場合に違和感がありませんし、本院からの医師の応援も可能になるからです。
そうでないと常磐病院の医師が減り、雪崩現状でつぶれてしまうと思いました。しかし、そうはなりませんでした。幸い、最低限の数の医師が残ってくれているので、やっていけています。
今年3月に市立病院改革プランが策定されましたが、常磐病院の医師のなかにはすでに民間から勧誘されている人が何人もいます。ですが来年3月までは一緒に行動してくれることになっています。
常磐病院の医師1人の1日の診療収入は45万円です。34万円で黒字の病院がありますから、赤字は構造的な問題で続いていました。ベッド利用率にしても医師数に合わせた数にできればいいのですが、公立病院はすぐにスタッフの数を減らせません。
2月に医師数に合わせてベッド数をワンフロア減らしました。するとベッド利用率は90%になりました。ワンフロア分のスタッフは、共立病院が10対1看護(患者10人に対して看護師1人)から7対1看護にするので、異動が可能になりました。
ぼく自身が絶対的な医師不足を認識したのは2年前です。5年前に新臨床研修医制度が始まり、研修医は大都会の民間病院に流れました。でも3、4年経ったら、大都市が医師過剰になって、東北に戻って来ると思ったら、大学にも戻りません。東京でもいまだに医師の充足率は8割で、医師を集めるのは困難です。
医療のニーズが増えているのに医療費を削減していることも医療崩壊の原因の1つです。医療スタッフの収入を低くすればという話もありますが、そしたら医療スタッフのなり手がいなくなり、こそくな解決法でいい医療は担えません。
いわき型ERをつくろう
いわき市医師会会長 木田 光一さん
自治体病院の役割と使命は地域の中核病院であり、民間では取り組みにくい不採算の高度や政策、精神、へき地、救急、リハビリなどの医療です。全国には千の自治体病院がありますが、その八割は赤字です。
平成19年6月には自治体財政健全化法が制定されて自治体の赤字が許されなくなり、12月には公立病院改革ガイドラインが作成され、民営化や統合が検討され始めました。病院経営が厳しい背景には患者の負担増、医療報酬の引き下げ、不採算医療への国の財政措置の削減、新臨床研修医制度などの影響による医師不足が挙げられます。
いわきの医師数は平成18年のデータで611人です。人口10万人に対して167.7人で、県の176.1人、全国の206.3人を下回っています。今年五月現在、病院は30、診療所は260余。いわきの医療問題はまず勤務医の不足です。12年から6年間に56人、14.8%減りましたが、県では0.6%減、全国では8.9%の増になっています。
それによって救急車の円滑な受け入れが難しくなり、地域内で治療が受けられないケースも出てきています。また地域内の医療連携システムもうまく機能していず、休日夜間急病診療所と共立病院救急外来、二次輪番病院と共立病院の救急救命センターの関係を考えていかなければなりません。
それに病院間で不足している医師の相互交流を活発化させるとともに、在宅医療の患者の状態が悪化した時や、診療所で確定診断がつかない入院の必要な患者の受け入れ先がスムーズに見つかる方法も検討しなければなりません。
地域医療再生に向けて、5つの提案があります。1つはいわき型ERの立ち上げ。休日夜間急病診療所と共立病院救急外来をいわき型ERにして、開業医が初期治療、その後の入院治療は病院の勤務医がします。
2つ目は救急の受け入れ態勢整備のため、共立病院に管制塔病院になってほしい。
3つ目は医師の相互交流の活発化をはかる。4つ目は診療所との医療連携のために開放型病院を整備する。そして最後に不足している診療科の医師の招へいと魅力ある病院づくりです。
民間と公的病院が並存する日本の態勢は、地域医療のニーズの変化に柔軟に対応し、不採算医療の提供も可能にしてきました。今後もこうした仕組みを守る必要があります。
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