自分の病院の立場から、診療をしながら感じていることをお話ししたい。
いわきの場合、「医師不足」という言葉は適切ではない。医師の偏在化が起きて病院の勤務医がいないということ。結果、入院医療や救急に影響が出ている。共立病院でさえ、診療科目の閉鎖をせざるを得ない事態に陥っている。
松村病院は、臨床研修制度が始まる前、26人の常勤医師がいた。それが現在、12人にまで減ってしまっている。うち、救急当直の参加は8人。それはどういうことなのか、通常勤務が終わって夕方5時から当直に入る。救急車が来る。外来だけで帰ったとしても1時間はかかる。それが入院となると倍の2時間。わたしは最大7台受けたことがある。
うちが断ると共立しかない。だから、受けられるものはどんどん受けるようにしている。以前は理事長ということでお目こぼしをいただいていたが、医師がいなくてそれどころではなくなった。今年1月から当直を月4回と土曜の日直をやっている。
当直とは、まず午前8時半から午後5時までの通常勤務をこなし、次の日の朝まで当直をする。さらに夕方まで勤務し、やっと帰れる、というもの。勤務医不足というのは、残っているものにどんどん負担がかかり、疲れて開業を考えている医師は1日も早く開業をするようになり、それ以外の医師は他の病院に移りたい、と思う。そして共立病院に負担がかかっていく。このまちの根本的な医療がおかしくなっている。
財団の使命として看護学校も持っている。その授業もしなければならない。3学年25人の生徒がいる。募集をやめてしまうと、このまちの看護医療のバランスも崩れてしまう。だから安易に閉鎖もできない。
大学に医師派遣のお願いに行っても「医師はいません」と言われる。公立大学はお百度を踏み、私立大学は献金する。でも、大学にさえ医師がいないのだから、いわきの民間病院に派遣されるわけがない。その原因は2年前に始まった臨床研修医制度にある。
いま松村病院には内科医がいない。私は脳外科医だが、総合診療科として外来で内科の患者を診ている。市民の人たちに知っていただきたいのは、産科や小児科だけの問題ではなく、病院の医者がどんどん減っている、ということ。みんな必至に耐えて乗り越えようとしているけれども、このままではドミノ現象が起こる。いわきの医療が崩壊してしまう。それほど現状は危うい。
臨床研修制度を動かせるのは国だけ。でも都道府県で考えろ、と言っている。例えば医学部の定員を増やしたとしても、卒業するまでに6年、専門医が生まれるまでには15年もかかる。そんなに待っていられない。ここ1、2年で手を打たないと大変なことになる。
中通りはまだいいが、いわきは本当に過疎地。東京からも仙台からも福島からも2時間かかる。東京から当直のアルバイトを頼むとしても、翌日の朝の診療に間に合わない。いわきの医療がいま、どれだけ深刻か、それだけをお伝えしたいと思った。
|