いま、医療で一番問題なのは安心・安全面で地域格差が起こっている、ということ。「格差社会」は経済だけの問題ではない。命にかかわるだけにこちらの方が深刻。同じ額の税金を払っているというのに、住んでいる地区によって、一方は手厚い医療が受けられ、片方は十分な医療が受けられない、という現実が存在している。そんな馬鹿な話はないと思う。
病院勤務医不足の主な理由は@卒後臨床研修医制度の導入A開業志向B診療科選択におけるアンバランス(産婦人科・小児科・脳外科など多忙な診療科を敬遠する傾向)B女性医師の増加(出産・育児などでブランク時期が生じる)―など。
かつて医師の動きは、各大学病院の医局が仕切っていたが研修医制度の導入によって「全国どこで研修を受けてもいい」ということになり、若い医師が症例数が豊富で便利な都市部を志向する傾向が強くなった。結果、地方の大学に残る医師が極端に減り、それまで地域医療を一手に担っていた、医局による医師の配置・分配・派遣機能が崩壊しつつある。
特に200キロ圏内、大学病院から2〜3時間かかる地域は医師確保が難しく、関連病院からの引き上げが医師不足に拍車をかけ、ドミノ現象を生んでいる。勤務医の場合、重病患者が多く、医師の絶対数が少ないから、診療ストレスが大きく、医事紛争のリスクを抱えることになる。それに加えて、自分の時間を大事にしたい、自分の能力の範囲内(テリトリー)でやっていてもいい、という若い医師のライフスタイル・意識の変化、が開業志向を生んでいる。女性医師も、かつて全体の1割程度だったのが4割にまで増えている。
呉羽総合病院に関して言えば、一昨年2月から産婦人科、昨年4月から小児科が休診している。年間450の出産数があった産婦人科の休診により、市南部ではお産に対応できるのが1つの診療所だけになり、里帰り分娩が困難な状態。小児科についても、インフルエンザやノロウイルス感染症が流行している時期は平均30〜40人の入院患者があったが、現在南部には入院できる医療機関が1つもなく、20キロ離れた共立病院へ行かざるを得ないのが現状。それができない場合は親が仕事を休んで小児科開業医のところに通院し、点滴などの治療を受けることになる。
また心配なのは、診療科目のない一刻を争う患者をどうするか。大動脈瘤破裂や急性心筋梗塞の患者は、郡山か日立の病院に送ることになるが、一刻を争う患者に運ぶだけで2時間も3時間もかけるリスクが出る。
そうした状況で考えなければならないのは、地域としての機能集約と分散。共立病院の一極集中をカバー、アシストして、患者本位
の共存の道を探る必要があると思う。
現在の医療界の動きは過渡期であり、エアポケット。いろいろお願いしてもなかなか思うように行かない。システム自体の限界がある。地域での医師確保は難しい。
闇雲に医師を集めればいい、というものでもない。その人材の能力やキャラクターを推し量る方法がない。問題のあるドクターを取ってしまったときのリスクはかなり大きいので二の足を踏むことも多い。ドクターの不均衡を解消するために医局以外のドクターバンクのような組織が効率的に配置できる方法があるのか、病院側と医師の意向をマッチさせられるのか、難しいと思う。実際、地域の医師確保の問題は混迷している。
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