いわき駅前にある世界館ビル内の5つのスクリーンが、昨年の11月からビルオーナーの直営館として営業をしている。中心市街地のど真ん中にある映画館。ご多分に漏れず入りが悪く、それまで入っていた平テアトルと平東宝が撤退した。それを受けて、ビルの持ち主である株式会社世界館が「平テアトル」という名称を引き継ぎ、独自に映画事業を続けている。夏までに少しずつ館内をリニューアルし、市民を巻き込んだ映画館づくりをしていく予定で、「文化としての映画館の存在価値を見直すことができれば。最終的には映画館の名称変更も検討していきたい」と、鈴木修典館主(48)は話す。
世界館ビルは築後40年。まちなかにある映画館を取り巻く環境が年々厳しくなるなか、映画館が集約されているビルとして、長年市民に親しまれてきた。市内にある映画館が1つ2つと閉館していくなか、世界館ビルの映画館は平テアトルと平東宝が何とか踏ん張っていたが、ここにきて「家賃を払ったら何も残らない。経営的にはとてもやっていけない」と、撤退せざるを得ない状況に追い込まれた。
そうなると、いわきから映画の灯が消えてしまう。そこで鈴木さんが「火中に栗を拾う思い」で、直営店としての継続を決意、「平テアトル」の名称と6人の正社員のうち3人を引き継いで、大・中・小さまざまなサイズの5つの劇場で映画上映を続けている。
自分で映画館を始めてみると、さまざまな問題があることがわかった。まず、入場者は年配の人と子どもばかり。若者がすっぽりと抜け落ちていた。みんな車を飛ばして、ひたちなかにあるシネコンに行っているという。しかもビルが古いこともあって椅子と音響とトイレがネックになっていた。映画の入場料だけでは赤字だということもわかってきた。
そこでビルを改装をすることにし、ビルそのものを映画、音楽、芸術を核とした文化の発信基地にする構想を立てた。そのコンセプトは「大人が遊べる空間」。映画は通好みのこだわりのある映画を増やし、すでにあるライブハウスの「BarQUEEN」とギャラリー「Party」との相乗効果を狙うとともに、テナントも狙いとマッチしたところを選ぶ。さらに1階のチケット売場には、ポップコーンなどファストフードや飲み物、カタログなどが買える店をオープンさせた。
そうした動きを受けて、「いわきには単館系のマイナーだけど良い映画、というのが来ない」と感じていた映画を愛する市民たち10人が結束、「応援する会」を立ち上げた。最初の上映は若松孝二監督の「実録・連合赤軍あさま山荘への道程」。14日から1週間上映し、初日は若松監督を招いてのトークショーを開いた。
さらに、いわきでロケが行われた「禅」を上映したり、「おくりびと」がタイミング良くアカデミー賞を獲ったり、「20世紀少年」がまったく入らなかったり、とチャレンジと一喜一憂が続いている。今後は「少年メリケンサック」を限定100人、500円で上映したり、「闇の子供たち」を四月四日からかけたりと、積極的な企画が用意されている。
「最終的には映画好きを増やす、ということだと思うんです。パソコンやゲーム中心の個人で楽しむ文化が主流になっているいま、映画の良さは感動の共感。確かにマナーの悪い客はいるかもしれないけれども、同じ箱のなかでスクリーンに見入って、涙を流して感動を共感できる。グッドフィーリング、ハートウオーミングです。そして、まちのなかでお茶や酒を飲みながら映画について語り合う。若者に媚びない、そんなまちになるといいですね。市民とコラボしながら市民を巻き込んで、いわきならではの映画文化がつくれたら、と思っています。館名も平の映画館にふさわしいものに変えるつもりです」
鈴木さんは、そう夢を語る。
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