平の平和通りには場末の趣がある。
平和通りとは本町通りから国道6号へ向けて走っている通り。もっとわかりやすく言えばキクヤ楽器と旧天地堂がある通り、ということになる。かつては、近くに平警察署があった関係で警察署通りと呼ばれていたが、商店街の旦那たちが頭を寄せ合って平和通りと改名。自動的に商店街の名称も「平和通り商店会」になった。
平の商業の中心地ともいえる本町通りが表街道なら、平和通り周辺はさしずめ裏街道だ。古い時代には草餅屋と呼ばれる女郎屋さんがたくさんあり、まちの影の部分を担っていた。それから喫茶店全盛時代になり、最近は若者相手のこぢんまりした個性的な店が増えている。でも、シャッターが閉まっている店も多い。
ある日の夕方、平和通りを散策した。いわきの音楽文化を担ってきたミュージックショップ天地堂は店主の高齢化などを理由に、9月に店を閉めた。ありとあらゆるジャンルのCDをとことん探してくれるまちのレコード屋さんで、いわきの文化がまた一つ消えた。ウインドーはベニヤ板で覆われていて、何とも寂しい。
少し歩いたら、古レコードやさんがあった。DJなどをしている人たちがよく集まるという。でも、駐車違反が厳しくなってから、気軽に店の前に車を停められなくなり、仲間たちが来ずらくなった、と店主がぼやいていた。
雑貨屋のおばあちゃんは、ひっそりと店を守っている。83歳だという。23年前にご主人を亡くした。身寄りがないわけでもないし、「来たら」とも言われるが、行くつもりはない。何人かのお客さんに励まされ、茶飲み話をしながら日々を送っている。
「この店締めちゃったら死んだ主人も寂しがるだろうし、生きがいがなくなっちゃう。お客さんとのふれあいが何よりの楽しみでね。毎日寄ってくれる人もいるんだよ」と話していたら、タクシーが止まり、年配の女性が缶詰を3個買っていった。「この人、大きな会社の社長さんでね」と説明すると「いいからいいから、余計なことは言わなくていい」と風のように去った。
喫茶店「ウインザー」は開いて40年。かつて、周りには喫茶店がたくさんあった。ジャズ、名曲、同伴…。周辺にはデパートや銀行が多く、客には不自由しなかった。そのうちにモーニングサービスやランチ競争が激化し、コーヒーだけの人が遠慮するようになった。実際はモーニングやランチは材料費に取られて利益率が悪い。コーヒーだけで客数をこなした方が儲かる。しかし、時流がそれを許さなかった。そのうち車社会になり、コーヒーも気軽に飲めるようになって喫茶店はめきめき減っていった。
ウインザーを経営しているのは中野勉(72)・久子(68)さん夫妻。いまでは常連しか来なくなったが、かつてデートに使っていた若者が「まだある」と懐かしがって来たりもする。
陽がとっぷりと暮れると、平和通りは、個性豊かな飲み屋さんが活況を呈し始める。
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