「いわきを代表する食べ物はサンマのみりん干しでしょう。あれはどこにもないですから。ヤナギムシガレイの干物もいいかもしれない」。ウニの貝焼きは、結構あちこちにあるのだという。市の魚・メヒカリについての反応も今ひとつだった。
いわき市植田町出身。父親は新聞記者から土建業者になった変わり種。政治に興味がああり、県議会議員も務めた。「宇平」という名前は、「宇宙を平にするほどでっかいことをやれ」とつけられた。
磐城高校から日大農獣医学部水産学科に進み、学者になった。子どものころからリヤカーを引いた魚屋のおばさんが魚を売りに来ていた。だから、家の台所には1年中魚があった。夏はカツオ、ウニ、秋はサンマ、冬は塩鮭やアンコウ…。アンコウの吊し切りを間近で見て、ドブ汁に舌鼓を打った。そうした体験が、魚の栄養などを科学的に分析する研究に役立った。この道はすでに40年以上。『47都道府県伝統食百科』『食材図典』など著書も多い。
鮨の味を科学的に解明しようと、MRIを使って調べたことがある。すると、握った職人による飯粒の違いがはっきりとわかった。うまい鮨を握る熟練職人は、外側だけがぎゅっと締まっていて中は空気が多い。見習い職人やロボットは全体に詰まったようになっている。しかも熟練職人は粒の方向もきれいにそろっているが、見習いやロボットはバラバラ。あの、口に含んだ瞬間のフワッとした感じとは、その違いだという。しかも、いい塩梅が12グラムという数字まで出た。
「でも、結局食べ物は好みだから」とも。女性はシャリの小さいものを好み、男性は堅めのシャリ、人によってはネタが大きいものやシャリが大きいものを好む。大阪は江戸前鮨でも、全体的に甘め。そもそも昔は、マグロのトロは鮨ネタに使わなかった。それがアメリカの食文化が入り込み、日本人の間でも脂っぽい濃厚な味を好むようになった。
「カツオもね、戻りガツオを食べる風習はなかったと思う。活きがよくてさっぱりした初ものを好んだ。でも鮨は結局、ネタとシャリのバランス、そして握りたてであること。できれば30秒以内がいい。だからカウンターで食べるとうまいんだろうね。せっかく食べるんだから、うまい店を探して食べることが肝心。うまいと感じると唾液の分泌が盛んになり、消化もよくなる」
成瀬さんの言葉は、さすがに説得力がある。
食育にも関わっている。きっかけは学校給食だった。ここにも時代の変化があった。そもそも栄養不足の児童をなくそうと始まった学校給食が、肥満という問題を生むようになった。物質的に豊かになり、脂質の摂取量
が急激に増えたためで、その病巣は家庭内の食生活にあった。子どもたちの健康を守るには、学校と家庭の綿密な連携が欠かせないことに気づいた。
「食育ってね、実は心も関係するんですよ。心と体の健康を考えなければならない」。成瀬さんの実感だろう。
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