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 「この海の向こう、太平洋の向こうに何があると思う?」。写 真家の大竹英洋さん(36)は、いわき市平豊間字合磯の絵本美術館「まどのそとのそのまたむこう」から見える海を指して、子どもたちに聞いた。
 「この海の向こうにはアメリカ大陸があって、違う世界がある。さらにその向こうには平坦な針葉樹林の森がどこまでも続き、そのなかにたくさんの湖がある。北の森、ノースウッズと呼ばれているよ」と、おはなしを続けた。
 ノースウッズ。北アメリカ北部、アメリカ・ミネソタ州からカナダ中央部まで広がる北方林で、1999年、大学を卒業した大竹さんは、日本の山にはいなくなった野生のオオカミを求めて、その森へ向かった。野生のオオカミを撮っている動物写 真家のジム・ブランデンバーグさんに会いたかったという。
 以来、毎年のようにノースウッズに通い、長い時には1年の半分以上を森で過ごす年もある。深い森に小屋を借りて森を歩き、森を知り、森に学ぶ。湖をカヌーで渡り、湖畔にテントを張り、燃えさかるたき火で体を暖めながら、ひとり満天の星空を見上げる。
 平坦な森と湖が果てしなく続き、行けども行けども景色は変わらない。しかし何年も通 っていると、見えるものが違ってくる。例えば、森の年齢。同じに見えても、青年の森だったり、おじいさんの森だったりして、そこに住んでいる動物たちも違う。だから足を踏み入れて歩き回ってみないと、外側から見ているだけではわからない。
 大竹さんは幼稚園の年長からずっと東京で育った。大学生になってワンダーフォーゲル部に入り、月に1度ぐらい、長い休みには合宿をしながら、山登りをするようになった。山登りと言っても川沿いを歩く沢登りで、一般 の登山道とは山の見え方が違う。
 3年生の時に「写真家になりたい」と一眼レフのカメラを買い、本格的に写 真を撮り始めた。自然を旅し、かかわり合いながら生きて、自然を伝える人になりたいと思った。そしてノースウッズと出会った。日本にいる間はアルバイトをして、次の旅費をつくる。それに写 真展や講演会を開き、森での体験、見たものや出会った動物などを伝えている。
 これまでに写真絵本を3冊出している。『ノースウッズの森で』と『春をさがして カヌーの森』それから『もりのどうぶつ』。『もりのどうぶつ』は小さな子ども向けで、本を開いて動物たちと出会い、同じ地球で同じ時間に暮らしていることを感じるきっかけをつくりたかった。
 一度きりの人生で見きれないぐらい広大なノースウッズ。大竹さんはフロンティアとして、ライフワークにこれからも日本から通 って見続け、いつかみんなと同じ目線で体験したことを、1冊の本にわかりやすくまとめたいという。
 まどのそとのそのまた向こう、海の向こうの大陸の奥に何があるのだろう。




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