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さあ、でかけよう。
コンセプトを抱えたワークショップの参加者と一緒に、日比野さんも平の本町通
りに飛び出した。2年前の市立美術館でのワークショップの時に、自転車でまちなかを走ったから、平のまちは少し知っているし、見覚えもある。生涯学習プラザが入っているT1ビルから30メートル大通りに向かって本町通りを歩いた。
てくてくてくてく、てくてくてくてく。日比野さんはアレグロのリズムで、風を切って歩く。ちょっと油断していると、ずんずん置いていかれる。そして気になるものを見つけると、急ブレーキをかける。本屋の店先のラックに置いてあった日に焼けた少女漫画雑誌、空き店舗のシャッターに張られたイベントポスター、中野洋品店の建物。洋品店では中に入って、店主の中野さんに建物の話を聞いた。
本町通りと銀座通りの交差点では、立ち止まってまちに漂う空気を感じた。それから、30メートル大通
りを6号線に向かって歩き、スタッフの案内でアートスペース エリコーナを目指した。途中、いわき動物病院の前でしばし、子犬たちに見入った。「けっこう、安いなあ」とつぶやくスタッフに、「犬は買うんじゃなくて、拾うかもらってくるものでしょう」と日比野さん。
エリコーナで佐藤忠良の作品を見て、そのすぐ近くの、できあがったコンセプトチラシを新聞に折り込んでくれる木部新聞店を訪ねた。木部社長にあいさつし、隣の作業場を見せてもらった。日比野さんの実家は、いまはやめてしまったけれど新聞販売店だった。折り込み台にチラシが並ぶ空間や折り込み機を、日比野さんはデジカメで撮り、木部社長に何やら質問し、隅に立て掛けられていた年季の入った折り込み台を、なつかしい眼差しでみつめた。
その後、おもしろ古道具屋を二軒回ったけれど、あいにくどちらも閉まっていた。新川緑地公園を文化センターに向かい、旧大黒屋からレンガ通
りを歩いて、昼食を取る予定の中華料理店へ向かった。旧大黒屋の方に右折する時、市立美術館が見えた。9.11のテロの翌日、ライブペインティングをした場所だ。日比野さんはあの日、テレビを一晩中つけていて、頭いっぱいだったその映像を縦3メートル、横12メートルの巨大キャンパスに描いた。
いわきに来る度に、日比野さんが知るいわき、思い出が少しずつ増える。日比野さんからさまざまなメッセージを受けるいわきの人々も増える。
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