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 昭和43年、平工業高校の2年生だった鈴木直さんは、国立科学博物館の研究員だった小畠郁夫さんに手紙を送った。
 「いわき市の大久川の崖で骨を採集しました。さらに1.5メートルほど続いていますが、掘るのを中止しています。どうしましょう」
 小畠さんは当時、アンモナイトを専門にしていた。そこで、同じ研究員で古脊椎動物の専門の長谷川善和さんに相談した。フタバスズキリュウの物語の始まりだった。

 フタバスズキリュウが眠っていた双葉層群は、8500万年前の中生代白亜紀に形成された。大陸に近い、浅く暖かい海で、フタバスズキリュウ、イワキリュウ、サメなどが群れをなして泳ぎ、アンモナイトや大きな貝などもいた。いまのアンモナイトセンター辺りは、潮流の吹きだまりだったという。
 フタバスズキリュウは体長が6、7メートル、首が長く、頭は小さく、研究によると、陸上にあがれる体にはなってなかったようで、胎生だった可能性が強い。発掘された時の状況から、サメたちに襲われたのではないか、と推測される。地球上に1億6000万年ほど生存し、恐竜と同じ中生代の終わりに絶滅した。

 いわきでは四倉町の高倉山に古生代二畳紀の地層があり、絶滅寸前の三葉虫が見つかっている。中生代は双葉層群のフタバスズキリュウやアンモナイト、新生代は常磐炭田、イワキゾウ、イワキクジラが発掘されている。
 一つの市で古生代、中生代、新生代の化石が見られるのは全国でも珍しく、ユニークで、化石が好きな人にとってあこがれの地らしい。もしかしたら、住んでいるわたしたちの方が住んでいる場所のことを知らないのかもしれない。
 フタバスズキリュウが眠っていた辺りに立って耳をすます。発見されてから40年。その時間は長いのか、短いのか。その間、何をして、何ができ、そして何をしなければならなかったのか。
 2年前、フタバスズキリュウは「フタバサウルス・スズキイ」と学名がつけられた。スズキイの発音が草野心平っぽくって、いわき仲間をさらに感じる。



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