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草野天平の代表作とも言える詩だ。ある意味で難解な詩だが、「理解する」という常識的な思いを投げ捨ててみると、薄ぼんやりとイメージが湧いてくる。
この詩は絵画で言えば抽象画と言える。天平はその視覚的表現を、文字で試みた。自らの内面
にあるイメージを言葉や文字に置き換え、組み合わせていく。イメージに近い言葉をノートに書き、配置を換え、ニュアンスのようなものを詰めてゆく。その作業を繰り返しながら精度を高めていったのだっだ。
天平晩年の詩を明快に表現したのは、下関在住の佐藤泰正だ。佐藤は自らの評論集でこう書いている。
「言葉や対象がもはや一切の重みを失い、一切の直接的な描写
や話法が排され、かろやかな濃淡のうちに、うちのべられた一枚の銀箔に似た風趣」
「河」を読んでみると、「浮遊」とか「超越」といった言葉が浮かぶ。それは、俗からの遊離であるのだが、決して独りよがりではない普遍性のようなものも秘めている。険しくなく、特に事を荒立てることなく、穏やかでゆったりとした日常。そうした日々の中から自然にわき上がる「祝う」という思い。この詩には、そんな温かさというか、うららかさを求める思想のようなものがある。
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