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一文を寄せられない一文
 
 




 いわき市をはじめて訪ねたのは、2003年の4月で、それは自作の芝居について話す小さな会でした。「日々の新聞」を知ったのもその時、安竜さんからなにか文章を寄せないか、といわれたのも同じ日でした。
 創刊時の「日々の新聞」は日比野克彦さんの絵もカラーで、その後の第1面の高萩純一さんの写真も毎回よくて、いい紙で、それだけでもよくある地域新聞とはくっきりちがうし、平教会の巨木が一瞬にしてなくなってしまった記録、5月の海のウニ・アワビ漁のレポート、大黒屋百貨店がなくなって、「アルファクラブ」が落札した経緯、じゃんがら念仏踊り復興、低温日照不足で稲刈りが藁刈りになるかもしれないという心配の記録まで、ひとつひとつ力がこもっていて、いつの間にか俄かの「いわき市通」になった思いですが、さてこの新聞に一文を寄せるのはむずかしい。
 どこにでも通じるようなことは書きたくないし、といっていわき市についてなにかをいうほどの経験もない。他の土地の人で文章を寄せている日比野さんも佐藤忠良さんにしても、いわき市との関わりはなまなかのものではない。私は1泊したこともない。それでは「日々の新聞」には書けません。書いてはいけない、と紙面が私にいっています。
 民俗芸能を公演している芸能山城組の人が「じゃんがら」の「土くささを教えてほしい」といって、それは技術で伝えられるものではない、と館の保存会の人がこたえたという記事がありましたが、「日々の新聞」に「土くささ」など一向に感じなかった私が、いざ一文を、と思うと、この新聞に書くには、いわきの土くささを必要とする、そうでないと浮いてしまうという思いにとりつかれたのです。それはこの新聞の力です。
 より一般論を語らず、個別いわき市に傾倒する新聞であって貰いたいと思っています。
(脚本家・川崎市在住)    



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