日々の新聞

562号
2026年7月31日

            

    「安全」なんて言ったって、

    そんなもの、だれが信じますか

 いわき市平上荒川後沢から内郷小島町にまたがる1・6haほどの土地に系統用蓄電所の建設が現在、計画されている。震災後、楢葉町などからの避難者のために仮設住宅が建てられた場所で、新常磐交通いわき中央営業所上荒川待機所のすぐ近く。隣接する平成ニュータウンの住民への説明会が7月12日、団地内の集会場で開かれた。
 系統用蓄電所とは、発電所から家庭や工場に電気を送る送配電網に蓄電設備を直接つなぐ大規模な蓄電施設。イメージ的には、大容量の蓄電池や制御システムなどを収納した大型の輸送用コンテナ(重さは約27t)がいくつも置かれる。
 電力需要が供給を上回る太陽光や風力による再生可能エネルギーを、安価な時間帯に市場から購入して蓄電し、電力需要が高まる時間帯に放電して供給する(東北電力に売る)という。背景に福島県ではすでに再生エネルギーの導入量が、県内電力消費量に対して100%を上回っていることがある。
 事業者の株式会社ESRホールディングス(本社・東京、熱田芳弘代表取締役)によると、計画されているのは具体的に出力が52・5MW、蓄電容量は171MWhの特別高圧蓄電所と、出力が約2MW、蓄電容量は8MWhの高圧蓄電所の二カ所。出力が52・5MWの特別高圧蓄電所というのは、国内でもかなり大きい。
 ここ数年、ESRホールディングスは、建設場所を探して福島県内で52カ所を当たったが、唯一、建設できるのはこの平上荒川後沢と内郷小島にまたがる土地だった。その理由は、平変電所につながる鉄塔が目の前にあるからという。

 系統用蓄電所の建設計画で、住民たちが一番心配しているのは蓄電所の火災や爆発。熱暴走の発生や消火の難しさから一度起きると大規模化しやすく、そのほとんどは原因が特定されていない。建設場所から一番近い明治団地の住宅で107m、上荒川の住宅は115m、平成ニュータウンでは130mの距離。そこから家々がずっと広がっている。
 事業者の説明後、「言いたいことがあります」と、女性がマイクを握った。「東京から来られた方はこの土地の事情を知らないと思いますが、蓄電所を造る隣にバス停があります。いわきのバスの運行を司る大事な場所です。それと、建設予定地の横の新しい家々は、原発事故で双葉郡から避難して来た人たちが建て、ようやく落ち着いて暮らしています。あなた方は『大丈夫』と言いますが、その時の不安を考えたことはありますか。ここの土地の者はみんな、原発事故を体験しています。そういう経験がある所に、このようなものを造る神経がわかりません。『安全』なんて言ったって、そんなもの、だれが信じますか」と、思いを述べた。
 それは本当に暮らす地域にとって必要なものなのか。住民にとって迷惑施設でも、もし地域に不可欠なものだったら、どんな心配なことがあり、その心配を取り除くための手段や方法は何なのか…。原発事故を体験した土地だから、ここに暮らすみんなで考えていく必要がある。それには、少し先の未来を見据えたまち全体の青写真を描くべきだろう。

 特集 檻の中のライオン 楾大樹さんのはなし

 


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