日々の新聞

535号
2025年6月15日

 日曜夜のテレビドラマ「キャスター」(TBS系)が終わった。悪事を隠すために組織ぐるみで口をつぐむ。その裏には大きな権力と深い闇があり、弱いものたちが犠牲になる。それを阿部寛が演じるテレビ記者出身のキャスターが暴いていく。
 鋼のような結束で企業の秘密を守り続けてきた社員たちのなかには、良心の呵責に耐えられず苦しんでいる人もいる。このドラマでも、重大な企業秘密を頑なに守り続けてきた原子力関連施設の所長が、問題解明の鍵を握る1枚の写真を記者に手渡す。「どうしてですか」と尋ねると、晴れ晴れとした表情で「これまで、何も見ないように会社に尽くしてきました。それに嫌気がさしただけです」と答える。

 去年の11月から、いわき信用組合の問題が頭から離れない。不正融資の中心にいたとされる江尻次郎さんのところへはたまに訪ね、いわきの経済状況や体調管理のことなどについて話をしていたから「すべてが江尻の責任」という結論の出し方には「はたしてそうだろうか」と思うところもある。一番知りたいのは「なぜ重荷を背負う合併をして不正融資をし続けなければならなかったのか。その背景に何があるのか」ということなのだが、どの記事も、現象面をなぞった勧善懲悪的なものにとどまっている。

 木村守江福島県知事の県政汚職事件を『木村王国の崩壊』としてまとめた吉田慎一記者(朝日新聞)はあとがきで「この取材のなかで考えたのは、日々のニュース報道のことである。客観報道の名の下に『勧善懲悪』主義者になり過ぎてはいなかったか。事件の一過性にかくれて、ゆがんだ人間像を伝えてはいなかったか。(中略)線香花火のようなものではない、全体を踏まえた追跡報道の必要性を強く感じた」と書いた。
 この問題が明らかになってから、全体を俯瞰し、つながりなどに目を凝らしてきた。さらに歴史を紐解き、いわき信用組合が地域や庶民にとって、いかにかけがえのない存在であるかを知った。その、寄り添い続ける精神は、自らの財産を投げ打つ覚悟で倒産を回避した4代目理事長、新妻長蔵さんによって培われた。

 自らが依頼した第三者委員会の調べでさえ証拠隠滅を図り、あいまいな言葉で現実逃避をしようとする関係者たち。「このごに及んで何を隠そうとするのか。何を守ろうとしているのか。なぜ、この融資先に対して、異常ともいえる優遇措置をとるのか」という謎は残されたままですっきりしない。
 「貸しはがし」といった非情な手段をとらず、地域や市民と歩んできた、いわき信用組合。生き残って再生して行くにはまず、関係者それぞれが自ら語る勇気を持ち、膿を出し切らなければならない。そこからだろう。  

 特集 いわき信用組合の不正融資問題

 


黒田征太郎さんの「2025たねまくカレンダー」です

 

黒田征太郎さんのオリジナルカレンダーです。
いつものように大きさは縦、横ともに18㎝。2025年のカレンダーはぬりえになっていて、それぞれが好きな色をぬって自分のカレンダーにします。もちろん土曜と日曜、祝日もです。毎月の絵には黒田さんの短い言葉も入っています。

価格:800円(税込み)
送料:2部まで200円、3部までが300円、4部以上10部まで430円、10部以上は宅急便になります。     
 

 たねまくカレンダーは震災後、黒田さんのご厚意で絵を提供していただいて作っています。ご家族やお友達などへのプレゼントにどうぞ。

 ◆購入方法
日々の新聞社に電話またはメール、FAXで「たねまくカレンダー購入希望」と明記し住所と電話番号、購入部  数をお知らせください。確認次第、郵便振込み用紙を同封し、お送りいたします。
※なお、振込手数料とATM手数料は購入者が別途負担となりますのでご了承ください。

 ◆お問い合わせ・ご注文
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