日々の新聞

536号
2025年6月30日

   心平とやなせたかしとアイスクリーム

 NHKの朝ドラ「あんぱん」は、アンパンマンの作者のやなせたかしさんと暢さん夫妻をモデルに、ふたりの人生を描いている。
 つい先日、佐賀で暮らす友人の井手節子さんから「NHKラジオで戸田恵子さんが読む、梯久美子さんの『やなせたかしの生涯』を聴いていたら、草野心平さんが出てきました」と連絡があった。偶然、少し前にその本を読んで心平の不意の登場に驚いていたので「心平さんはいろんな所にひょっこり現れます」と返した。
 『やなせたかしの生涯』に心平が出てくるのは、やなせさんの両親についてふれられている第1章の「父と母」。父の柳瀬清は明治25年、かつて庄屋だった旧家に生まれ、高知一中から上海にあった東亜同文書院(アジアで活躍する人材を育てる日本の高等教育機関)で学び、日本郵船の上海支店や講談社に勤めたあと、招かれて朝日新聞社の記者になった。
 そのころすでに結婚し、やなせさんが生まれていた。中国語が堪能だった清さんは支那部に配属され、翌年、広東特派員に任じられて単身で赴任し、仕事のかたわら、当時、広東省の嶺南大学に留学していた心平たちと短歌結社「一葉社」をつくり、文学活動も楽しんでいたという。清さんは心平より11歳上で、赴任から一年半後、急病で亡くなった。
 井手さんの連絡から間もなく、用事があっていわき市立草野心平記念館を訪ねた際、専門学芸員の長谷川由美さんが立ち話のなかで、心平とアイスクリームのはなしをしてくれた。
 小学5年生の心平が東京で暮らす兄の民平に上野で開かれていた大正博覧会に連れて行ってもらった時、民平は心平に食べさせたくてアイスクリームを注文したが、食べたことのない心平は「こんなのヤだから氷水をのみたい」と言い、民平は氷水を頼んで心平の分も食べたという思い出話で、心平にとってアイスクリームは特別なものという。
 48歳の時には、弟の天平の病状が悪い、という連絡を受けて、高熱が続いているから食べたがるだろうと、心平は魔法罎にぎっしりつめたアイスクリームを持って、天平のいる比叡山松禅院に向かった。天平は「食いたかった」と喜んだが、ほんとうに食べたかどうかはわからない。

 雪まじりの霙がマントにかかり。
 灼泥の銀座のビジャビジャ道を歩きながら。
 ――急になだれる死の気配。
 おれはあした魔法罎にアイスクリームをぎっしりつめて出発する。
 天平よ生きていて待て。
 最後のたべものにならないための改めての最初のたべものを死なずにいて待て。

 その時の思いを心平はそのまま、詩「アイスクリーム」に書いている。

 特集 原発と地震

 


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