日比野克彦の部屋

明後日のアート

 80年代の作品が16点、90年代の作品が59点、2000年代以降の作品が121点、合計百96点を展示した個展が現在、姫路市立美術館で開催中です。特に90年代の作品は、30年ぶりに展示した作品が多く、作品を通して当時の世相が感じられる展示になっています。
 89年天安門事件、95年阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、97年地球温暖化に関する京都議定書締結、99年東海村原発事故、2001年、同時多発テロ事件など、90年代近辺は、それまでの80年代の経済、文化ともに右肩上がりの様相(21世紀の明るい未来を目指す雰囲気)から、世紀末的予兆の出来事がいくつも起こってきた時代でした。
 そんな中で制作された作品は、80年代の個人的世界観であり、人と人の距離感が近く、体温が感じられる作品から、客観的世界観になり、その体感温度は低温帯になり、取り上げるモチーフも抽象化、または、心象的な人物描写に移っていっていることがわかります。
 これら2つの時期を経て、生まれてきた2000年代以降の作品として、今回は2007年に金沢21世紀美術館で制作され収蔵されている99枚の朝顔の種の絵が展示されています。1枚の絵のサイズは約150cm四方で、その中に1粒の種が大きく描かれています。
 この種は、明後日朝顔プロジェクトという21世紀になってから盛んになってきた、アートプロジェクト(地域との連携、自然との共存などが大きなテーマとして掲げられているものが多い)で収穫した種です。この99枚の種の作品は、80年代の個々の多様な個性と90年代の社会的課題への視点の2つの脈が合わさって産まれてきたと言えるのではないでしょうか。
 このような考え方が言えるのも、自分が自分の作品をひとつの空間で、連続的に鑑賞することができたからであり、当事者である私がその時代にそれを意識していたわけではないのです。あらためて、作品(意識を外材化した物)の役割、意義を感じた展覧会でした。展覧会のタイトルは「明後日のアート」。11月7日までやっています。

(アーティスト)

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