オンブズマン

 紙面を読んで From Ombudsman531 

 

画・松本 令子

 

 宍戸 博

 本紙530号(3月31日)に掲載された「好間キッズクラブ」の記事に関心を持った。私は学校に行かない子どもたちの親の会の世話人をしている。会と名乗っているが、月に1度、市民会館の部屋を借り、時たま訪れてくる保護者の方からお子さんの様子や困りごとを伺うくらいの小さな活動である。
 令和5年度に小中学校で不登校の児童生徒が全国で約34万6000人いたことが、文部科学省から昨年10月に報告された。前年度比約5万人と急増している。いわき市でも500人を超える子どもが不登校であった。文部科学省による不登校の定義は、年間30日以上欠席した児童生徒である。休みがちだったり、登校するが教室に入らない子どもを含めると、学校に行かない子どもの数はさらに増える。
 不登校の理由は様々である。学校の教え方が子どもと合っていないのも、理由の1つではないかと言われている。日本の学校は、文部科学省が示す学習指導要領に沿って教育が行われる。独自の教育システムの学校もあるが、北海道から沖縄までほぼ同じ内容の授業が同じ仕組みで教えられている。日本の小中学生は、少なくなったとはいえ950万人ほどいる。子どもたちはそれぞれ個性を持っている。多様な個性の子どもたちを、学校では一律に教室に入れて机に向かって座わらせ、黒板の前に立った先生の説明を静かに聞かせる。子どもは個性を出しづらく受け身になりやすい。
 ところが「好間キッズクラブ」では、子どもが情報を集めて興味・関心がある学びを自ら選んでいる。子どもは、自分のやりたいことは自発的にやり進める。子どもが自分の好きなことに熱中する力はとても強い。記事の中で、ピアノで遊んでいるうちに「エリーゼのために」が弾けるようになった子どもが紹介されている。峰丘さんのスペースや他の学び場でも、子どもたちが好きなことに夢中になっているのではないか。
 教室での座学により、知識を効率良く得てゆく教育も大切である。ただ、社会には様々な仕事があり、仕事への就き方もいろいろある。子どもの個性を尊重し、1人1人の興味・関心を伸ばす教育もまた大切ではないか。「好間キッズクラブ」の学びは、それを伝えてくれる。子どもの自由な学びを支える草の根の住民活動が、教育を豊かにする可能性を感じた。

(「たけのこの会」世話人)


 

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