オンブズマン

 紙面を読んで From Ombudsman516 

 

画・松本 令子

 

 あべ みちこ

 第515号「市議選の候補予定者に聞く」を読んで、熱風を受けた。市職員を辞して、市会議員に転向する2人に話を聞いたものだ。両者共ドラマチックな人材で、何か新しい風を起こしてもらえそうな予感。道を切り拓こうとする気概はとても魅力的だし、親の七光りで政治家を名乗る輩とは素地が違う。市会議員は、尋常でない熱意が求められる。伏魔殿に斬り込んでいく鋭い視点と調査力も必要だ。多数決の暴力に屈することなく、当選して市民のために尽力してほしいと願う。
 特に医学部を中退して市職員に転じた小野さんが、今度は市会議員を目指すユニークさに注目したい。「人生何が起きるかわからないので、自分の思ったタイミングで動かないと」という言葉にも大いに共感する。私自身もまさに今そんな渦中で、次の扉を開こうとしている。
 ちなみに私の住む横浜市で熱意のある市会議員といえば、迷わず無所属の女性議員井上さくら氏を推したい。市民の声に耳を傾け、市政に多くの問題提起をし続ける方で、その行動力と冷静な分析力をリスペクトしている。市議会の最中、他の議員の作法に目を向ければ、居眠りにスマホ弄り、読書……など酷い現実に目がくらむ。税金泥棒と一部報道もされ大問題になったが、喉元過ぎれば何とやら……で、政党にぶら下がって仕事の本質を見失っている市会議員のなんと多いことだろう。
 横浜市は膨大な借金と問題が山積みで税金も高い。少子高齢化でお先真っ暗な政令都市だが、もっとも酷いのは現横浜市長である。次期選挙で再選させてはならない。その前に私がこの街を離れることにした。熱意の炎を掻き消されないうちに。
 市政は酷いが、26年間暮らしてきた愛着ある家を手放すのは断腸の思いだ。家族の器を維持するために、苦労して住宅ローン、リフォームローンを1人で返済してきた。私立中高一貫校から私立大学へ進学したわが子の教育費は膨大な費用が掛かったうえ、今は奨学金返済に追われている。20年前に起業して小さく仕事をしてきたが、コロナ禍で事情が変わり会社の借金も抱えた。
 サラリーマンならば50代はゴールが見えてくる。経済的余裕も生まれ、旅三昧やら趣味に没頭する同世代も多い。だが私は1つでも多く作品を書きたい。世の中には物語でしか伝えられないことが無数にある。本の中に希望を見出せるようなお話を創って、社会の闇と光、どちらも拾っていかなければと思う。
 時間は有限なのだ。人生後半戦は借金に振り回されず、やりたいことに熱意を注ぐことにした。次のフェーズでは背負ってきた荷物を減らしてコンパクトに暮らそう。今はコピーライターと名乗っているが、野望はまだまだある。幸せなことに仕事熱はなかなか冷めない。明日どうなるかわからないからこそ、次の扉をこじ開けよう。

(コピーライター)

 

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