紙面を読んで From Ombudsman | 428号 |
金澤 壮一
その座に就いてまだ数カ月の総理大臣は先日、ネット番組の冒頭でへらへら笑いながら「ガースーです」と言っていたのには、開いた口がふさがらなかった。と思っていたら、5人以上の会食は控えるようにマスク会食を、と自ら求めておきながら、芸能人たちとの忘年会に参加していたとのこと。比ぶべくもないが、ドイツのメルケル首相との落差はどうだろう。
そういえば、時代劇「大岡越前」でも「上正しからざれば下必ず乱れる」と、言っていたなあ。上に立とうとする人には統率する能力もさることながら、権力を維持するために世の中を煽って分断させるのでなく、共生社会を目指して、誠実に努力を積み重ねることを望みたい。
本紙2008年1月31日付の118号の特集記事(高校のいま)で、鈴木弘文先生(当時、磐城高校校長)のコメントに「現実は教師もバッシングにさらされている」とあった。仕事柄、学校の先生と接する機会がある。多くの先生は児童生徒やその家族のことをよく考え、熱心に教育に向き合っている。
思えば私が子どもの時は、父親から「先生の言うことを聞かなかったら、くらつけっかんな(げんこつをする)」と、よく言われた。翻って最近は、大人(親・教師)も子どもも平等だから納得しないことは聞かなくていい、という雰囲気が広がっている。
先生の言うことは絶対、と言いたいのではない。学校は地域共同体の支えを失って教育力を低下させ、不安定になってしまった。また校内に目を向ければ、子どもを守ろうとする先生が声の大きい先生によって肩身の狭い思いをしてしまう、ということも聞く。本来、子育てにおいて家庭と学校は車の両輪であるはずなのに。
われわれ子どもを診る者にとって、教師は貴重な協働者だ。教師が教師同士や家庭との共同性をつくることを目指して、5年ほど前から事例検討会を行なっている。目標はこちらが一方的に答えを出すのでなく、教師一人一人が問題を解決できるようになること。
数年経ったころ、参加者から「検討会を通して、迷っていた自身の考えを後押ししてくれる」との感想が聞かれた時は、うれしかったのと同時に会を続ける自信にもなった。考えてみたら私も家に帰れば娘の父親だし、地域では一人のおじさんだ。地域みんなで学校を支え、一緒に子育てをするという姿勢を持ち続けたい。
「日々の新聞の読者は『紙面を読んで』を真っ先に読む人が多いんですよ」と、あの包み込むような語り口で大越章子さんが教えてくれた。私はと言うと、世の中の問題、いわきのあるべき姿などへの意見が述べられている紙面下段の広告が好きだ。共感・納得・感心し・勇気づけられ、後ろからついていくだけだが、勝手に新聞と連帯感を持っている。これから長いお付き合いをお願いします。
(いわき市内郷在住)
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