omb436号

 紙面を読んで From Ombudsman436号 

 

画・松本 令子

 箱﨑 典子

 日々の新聞の購読も何年になったろう。大きなテーマを深く掘り下げ、調べ尽くした記事は読後、学びと思考の時間を与えてくれる。また、草野心平記念文学館での講演内容を丁寧に載せてくれるのはとても嬉しい。その場で聞いてもすべて把握は難しいので助かること「大」である。各取材へのご苦労は多々あるだろうが頑張って欲しい。
 草野心平館といえば、心平さんの天山文庫を思い出す。
 半世紀以上も昔、20代前半のある年の秋から春まで、日曜日ごとに川内村の天山文庫へ通った。早朝に家を出て電車、バスを乗り継いで四時間ちょっと、川内村へのバスはまさに「デコボコ道をガタゴト走る」であった。
 10時半から3時ごろまで書庫の蔵書整理を。心平さん宛てに送られてくる各地からの書籍を分類、装備し村民へ貸し出しが目的である。冊数はたぶん500冊ぐらいあったかも。
 たまに心平さんがおられる時は、作業の合間にあの優しい笑顔でいろいろお話して下さった。忘れられないのは帰り際のお土産のこと。当時はなかなか口に出来なかった外国のチョコレートや高級果物をいただいた。
 それを手渡してくれるのがお付きの女性。愛想良くもなし、悪くもない方であったが、なぜか渡してくれる顔は不機嫌で、少し睨む様な眼差しなのであった。その時の彼女の心境はきっと、何でこんな高いものをこんな人にやるのかな、なんて?? ちなみに心平さんが庭の花を摘んで下さった時などはにこやかな表情なのに。私としては彼女の冷たい? 眼差しにも臆せず、決して遠慮もせずにいただいたことは勿論である。
 もうひとつの忘れ難きこと、日曜日の作業時間を長くしようと、前日の午後に文庫へ入り、旅館へ行く前の一時、心平さんの一升瓶から盗み酒のスリルを味わったこと。上等な酒を湯のみ1杯、雪景色に誘われたのである。ホンワカ気分で旅館で熟睡。次の日は良心の呵責から一生懸命作業しまして、とても捗りましたよ。
 天山文庫での半年間のボランティアはとても貴重な体験であった。往復の途中の紅葉や雪景色、真冬の凜とした空気の中の天山文庫の佇まい、そして半月の池の周りに見たリスの可愛さ、などなど。思い出はいっぱい!!
 私の青春懐古の大事な1頁である。
 現在も草野心平記念文学館との関わりを持たせていただいており、天山の道は繋がっているのかな、なぁんてです。

(いわき絵本と朗読の会事務局)

 

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