omb451号

 紙面を読んで From Ombudsman451 

 

画・松本 令子

 

 広重 省一

 紙面でたびたび登場している「放射能汚染水の海洋放出」問題であるが、沿岸の漁業従事者にとっては、この春からの本格操業開始という段取りが一挙に崩されかねない深刻な問題である。原発の爆発・崩壊、放射能の大気拡散、汚染ゴミの中間貯蔵と10年経ってまた新たな「原発被害」がもたらされる。海は繋がっている。常磐沖だけではなく北は三陸、北海道の漁業にも大きな影響が出る。
 国や東電は放出による〝風評被害〟の軽減の名目で、魚の冷凍買取りや賠償金支払い等、またもや〝金〟で解決しようという腹積もり。これはかつて70年代初め小名浜の工場地帯で化学メーカーが亜硫酸ガス等を大気に放出し、地元の米や農産物に風評被害をもたらしたことが思い出される。いつか来た道である。
 汚染水の海洋放出はもはや公害問題である。SDGsの観点からいっても海を汚すな、大気を汚すなという問題で、風評被害を発生させない最大の手立ては汚染水の放出を止めることである。私も汚染物質の浄化技術の進展を急ぎ、確立するまで原発敷地内での陸上保管を考えるべきだと思う。
 450号の秋吉久美子氏の対談記は面白かった。彼女を〝出奔〟させたいわきの70年代の文化状況を想起する。平にはまだライブハウスはなく、主に喫茶店文化の時代だった。フィレンツェ、エスカイヤー、ミントン、ジブラルタル等ジャズ喫茶があり、高校生・高専生の溜まり場となっていた。私もフィレンツェでオーネット・コールマンやコルトレーンの洗礼を受け、ジブラルタルではハードバップに染まった。他の記事で読んだが、秋吉氏本人も磐女出入り禁止の店に悠然と出没し、何故かリクエスト曲はレッド・ツェッペリンだったというのが彼女らしい。

(宮城県在住)

 

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