紙面を読んで From Ombudsman | 453号 |

武野 大策
私の子供のころは流通業界の王者がデパートと呼ばれるもので、そこに行けばなんでも揃うところがよかったからでした。しかし、そのデパートは今苦戦を強いられており、とりわけ地方都市ではデパートが次々なくなっています。なんでもありだけでは人々の心を掴めなくなったのです。同じことが新聞にも。朝日、読売に代表される全国紙の購読者が減少している要因の一つだと考えています。流通業界で特徴ある専門店が幅を利かしているように、新聞でも個性が求められます。
福島県民の切実な問題である福島原発の汚染水排出問題を多く取り上げることは、地元に寄り添うという特徴が出ています。特に450号は専門家の意見をそのままトップに載せているのは素晴らしい。多くの新聞は専門家の意見を政府見解に対する補足にしているからです。私はこうした問題は専門家の意見を軸に論理をくみ立てるべきで、さらに、専門家の意見で政府の見解にさらに切り込んでいくものがあれば、なお良かったと思いました。
福島が生んだ人々を多く取り上げているのも特徴の一つになっていると思いました。新年号の452号は民俗学者山口弥一郎で、彼の民俗学的な考えで今を生きる私たちにメッセージを与えたいと思ってのことだと思います。しかし、今の問題にどう結びつくか、私には掴みきれなかった。そこを補う記事も欲しかった。また、新年号のほとんどの記事がこれで埋め尽くされていたのも気になります。この新聞が民俗学を扱うものと間違われはしないか。
新年号は過去の偉人や今活躍している人の考え方を紹介するのも良いが、希望を言えば、451号のトップ記事のような発行者自らの意見を掲載して、自己主張をしてもらいたかった。
(「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」共同代表)
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