omb455号

 紙面を読んで From Ombudsman455 

 

画・松本 令子

 

 武野 大策

 454号の特集記事は昨年の12月23日亡くなった外岡秀俊さんでした。2012年神戸で行われた「言論の自由を考える5・3集会」においてです。外岡さんがパネルディスカッションのコーディネーターをなされ、私の父・むのたけじが基調講演をしたので、その父の介添え役として同行し、お話ししたときのことが強く印象に残っています。
 その集会は3.11後政府あるいは東電ばかりでなく、マスメディア全体にも不信感が向けられているのではないかという視点で行われ、4人のパネリストが活発な議論がなされました。私のジャーナリズムの多くの知識がこのとき得られました。基調講演を含めてこの集会では、不信感を乗り越えるには新聞が民衆の合作になることに集約されるように聞いていました。
 つまり、新聞と読者の関係はとても重要です。日々の新聞を見て、この点で2つの特筆するべきことがあります。1つはこの「紙面を読んで」です。私は読者の意見を毎回掲載している新聞は見たことない。
 もうひとつは「投書欄」が見当たらないことです。その代わり一般記事の中に(投稿)の文字を入れて載せている。「投書欄」を充実させているのは読者を大事にしているように見えても、読者の意見は発行者のものと区別していることになります。一般記事の中に散りばめていると、読者の考えが自分たちの考えと同一であることを示すもので、一理あります。
 話を外岡さんのことに戻して、御目にかかった時は朝日新聞編集局長を辞められて、フリーの立場で福島原発事故を取材されていると伺い、驚きました。それだけ福島の問題を深刻に受け止めていたのだと思います。日々の新聞はその思いを引き継いでいるから今回の特集があったのだと思います。
 また、今回の特集はそうした事情も詳しく書かれていて、興味深く読ませていただきました。

(「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」共同代表)

 

そのほかの過去の記事はこちらで見られます。