omb459号

 紙面を読んで From Ombudsman459 

 

画・松本 令子

 

 安岡 正彦

 「本屋は背表紙で勝負する」
 これはかつて小倉にあった名物書店、金栄堂店主の名言です。日々の新聞も半折りされた第1面でまずは勝負。
 福島の原発が爆発した年の夏、1人車を飛ばしおそるおそるいわき市に行きました。ボランティア活動に参加するためでした。1週間後に北九州に戻る前に書店に立ち寄りました。その時、書架に置かれていたビニールに入ったタブロイド判の新聞に目が留まりました。小出裕章さんの顔写真でした。袋を開封するわけにも行かず、じっくり観察しました。情報紙かと思いきや、定期発行の新聞であることが分かりびっくり。しかもこの号は尊敬する小出裕章さんの特集。すぐに購入しました。ぼくにとっては永久保存版です。以来、北九州市からの読者です。
 文化や歴史を深く掘り下げる紙面の内容はもとより、日々の新聞の顔ともいえる第1面に注ぐ編集サイドの熱意には、なみなみなるものがあるのでしょう。写真も巻頭言もいつもインパクト大です。第455号の巻頭言「自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ」という茨木のり子さんのことばには、はっとさせられました。ロシアのウクライナ侵略をめぐってフェイクだの核シェアだのといったまがまがしい言説がまき散らされる中、手探りで情報の嵐の中から真偽をかぎ分けなければなりません。
 福島の子どもたちを山口に招待し、細々とですが保養キャンプを行っていますが、わが子の尿から検出されるセシウム137の値を心配するお母さんの話には、心を痛めました。そして何より、福島の情報が欲しいと思いました。そんな時に最も頼りになるのは、日々の新聞です。「海に汚染水を流さないでください」(第421号)、「絶対反対」(第424号)、「ほんとうに海に流してしまっていいのですか」(第436号)、「海に流してはいけない」(第450号)と、くりかえし汚染水の海洋放出特集を組み、警鐘を鳴らし続ける新聞は、他にありません。

(年金小百姓=北九州市在住)

 

そのほかの過去の記事はこちらで見られます。