紙面を読んで From Ombudsman | 460号 |
吉田 恵美子
456号の特集記事「この11年」の中で「石崎芳行さんに聞いた」の記事を読んだ。これほどじっくりと石崎氏の想いの深い部分に触れたのは初めてのことであり、共感する部分が少なくなかった。
私自身、東日本国際大学を基盤として動き出した「浜通りトライデック構想」の行く末を注目している一人であり、その動きの中で石崎氏の述べる「広域連携と人」がキーになると考えている。また、早稲田大学の松岡俊二教授が中心となって進める研究会のメンバーとして、福島第一原発事故後のこの地域の在り方について、立場の違いを超えて意見を交わす対話の場づくりにも少なからず関わりを持ってきた。
私は、もともと原子力発電の仕組みや、事故の経緯、原子力行政の問題点などに深く関心を抱いていた人間という訳ではなかった。市民活動組織のメンバーとして、原発事故以降の福島県浜通りが抱えることになった様々な地域課題に対して、何が起き、そして何がもたらされようとしているのかを知りたいというのがこうした場への参加動機だった。所謂、専門家と言われる方々の口から、オブラートに包まれない状態での情報が提供される場。「復興」という旗印の下、進められていることの日向と日陰の両面が見えるようだった。そして、その場に地域住民の顔が見えることは少なく、小さな分断の中で物事の判断が鈍っているように感じずにはいられなかった。
石崎氏は言う。「いわきが単独で生きようなんて思っちゃだめだと思う。相馬、新地まで入れて、福島県の海側、浜通りと言われるエリア全体を良くしていく、と考えるべき。そうすれば役割分担も出てくる。こういうことが起きたんだから広域的に連携しましょう、ということが大事」。至極当たり前のこの発言が今語られる不自然さを、私たちは肝に銘じるべきだと思う。
(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト代表理事)
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